一時期、世間で話題となった“モンスターペアレント”に対し、今の学校現場の課題と言われているのが、問題教師を意味する“モンスターティーチャー”の存在。生徒にセクハラまがいの行為をしたり、意欲を削ぐような態度をとったりと、SNSなどを中心にそうした教師の言動が問題視されている。今回は、その実態を探るため、自身の子どもがモンスターティーチャーの被害にあったという保護者の2人に話を聞いた。
「もう学校には行かない」とお願いされた日
兵庫県在住のFさん。当時小学校5年生だった真弓さん(仮名)が、モンスターティーチャーが原因で不登校寸前まで事態が悪化したと訴える。「あまり保護者の方々と繋がりもなかったので、その担任の先生について何も知りませんでした。ただ、始業式の日に娘が『なんかめちゃくちゃ性格悪そうな担任だった……』と、つぶやいたことが妙に気になっていました」。
それから間もなく、いつも元気な真弓さんが泣きながら帰宅してきたという。「どちらかと言えば、活発な方なので本当にびっくり。泣いている理由を聞くと、『先生に、“宇宙人”っていうあだ名を付けられて、みんなに笑われた』って。その時は、行き過ぎた冗談を言う先生なのかなと思ったのですが……。今思えば、そのときにしっかり意見を言うべきでした」と、Fさんは悔しい顔をする。
その日以来、真弓さんはいつも落ち込んで帰宅するようになり、遂には「もう学校には行かない」とまで言うようになってしまう。「信じられないことですが、あれ以来、娘を宇宙人と呼ぶようになって、動き方やしゃべり方も『宇宙人みたいだ』ってからかっていたようなんです。まわりは、子どもですから、いっしょになって笑って、からかうこともあったと聞きました」。Fさんはこの話を聞いて、すぐに担任の先生に直談判。一応、謝罪はあったというが、Fさんは「あの態度は、心の底から謝っているようには見えませんでした」と、怒りを滲ませる。
また、大阪府に暮らすNさんは、「裏切られたような気持ちで、今も怒りがおさらない」と憤る。当時、やんちゃ盛りだった輝樹さん(仮名)が、小学校6年生になってから真面目に授業を受けるようになったため、当初は担任教師のサポートが行き届いているのだと思っていたと話す。「担任は30代前半の女性で、真面目さと情熱的な雰囲気を併せもった方でした。参観日で初めて授業を見たときにも良い印象しかありませんでしたね。『こういう人だから息子も変わったんだ』と、心から思ったのですが……」。
異変に気付いたのは、輝樹さんの部屋を掃除していた時のこと。「小さい手紙が大切に勉強机の隅に折り畳んで置かれていました。読んじゃいけないと思ったのですが、どうしても気になって中身を見ると……。とても教師が生徒に書いたとは思えない内容で、『早く大人になってほしいなぁ』とか『輝樹くんが、一番先生の理想のタイプに近い』とか。これを見た瞬間に頭に血がのぼってすぐに抗議に行きました」と、Nさん。
しかし、担任教師は想像を絶する回答をしたという。「悪びれる様子は一切なく、『男の子は、こういう手紙でがんばれる』だの『一線を越えることは絶対にない』だの、とても教師とは思えない言葉でした。他の保護者の方に聞くと、息子だけじゃなくて男子生徒にはそういった接し方をしていたそうなんです」。この一件のあと、保護者たちと学校側で何度も話し合いを行い、こうした生徒への接し方はおさまったという。Nさんは言う。「本当はそんな変わった人は担任から外れてほしかったのですが、生徒からの人気は絶大でした。それが、親としては心苦しくて心配でしたね」。
このように、子どもに異変を感じたらすぐに学校側へ相談し、可能な限り他の保護者と一緒に改善を求めていくこと。そして、教師とはいえ、中には問題を抱える人も多いという認識を持つことが、子どもを守る大きな力になるだろう。