新入社員に仕事の間違いを指摘して「パワハラ」と抗議され時、あなたならどうする?「大人研究」のパイオニアにして第一人者、「大人養成講座」など多くの著書を世に送り出してきたコラムニストの石原壮一郎氏がその対処法をお伝えする。
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【今回のピンチ】
隣席の新人君は、仕事の間違いを指摘しても「はあ」と生返事しかしない。「そういうのはよくないよ」と穏やかに言ったら、「パワハラはやめてください」と抗議してきた……。
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なんせ新人ですから、至らない点があるのは仕方ありません。しかし、プライドばかり高くて、上司や先輩に教わる気がないタイプは困ったもの。しかも、「パワハラ」呼ばわりすればこっちがビビると思っているところが、極めて悪質かつ姑息です。
なんとも腹立たしい状況ですが、ここで素直に「バカかお前は!」と声を荒らげてしまったら、そのバ……いや、その個性的な新人君の思うツボ。「恫喝した」というパワハラの既成事実が出来上がってしまいます。
自分をなだめる意味も含めて、まずはニコやかな表情で「ハハハ、〇〇君は面白いことを言うね」と笑い飛ばしましょう。その上で、あくまで静かな口調でこう続けます。
「僕は後輩を指導するのも先輩の役割だと思っているけど、もしかしたら今の時代は、それがパワハラに当たるのかもしれない。とはいえ、よくないと思ったことを黙って見ているわけにはいかない。どうだろう、さっきのやり取りがパワハラに当たるかどうか、いっしょに人事部に聞きに行ってみないか」
ほぼ間違いなく、相手は「いや、その」と口ごもって引き下がるでしょう。もし「行きます」と言ったら、これ幸い。この新人君はすぐに「パワハラだ」と言い出すヤツだと、人事部に認識させておくことができます。
相手が口ごもって引き下がった場合も、最後のチャンスを与える意味で「これから先、気づいたことがあっても何も言わないほうがいいのかな。それだと〇〇君が困ることになると思うけど」と尋ねてあげましょう。
ここで「いえ、言ってください」と返してきたら、まだ更生の望みはあります。これまでのことは若気の至りということで水に流して、やさしくきちんと指導してあげたいところ。もし「言わなくていいです」と返してきたら、心置きなく〝自主性〟に任せましょう。彼には彼の生き方があるし、たぶんそんなに長い付き合いにはなりません。