「THE SHOW」「SBS 人気歌謡」「ミュージックバンク」「SHOW CHAMPION」「M COUNTDOWN」「ショー!K-POPの中心」…韓国には、地上波やケーブルチャンネルを含めて、音楽番組がとても多い。そのため、アルバムや新曲を発表したアーティストたちは一つでも多くの番組に出演し、一人でも多くの人々に楽曲を聴いてもらうため、寝る時間を削ってダンスや歌唱レッスンに励むのだ。
各音楽番組では、番組独自に音源販売量や再生回数、ファン投票などを集計し、その日の1位を決定。見事1位を獲得すると、番組最後に“アンコールステージ”を披露することができる。アーティストによっては「1位が取れたら、アンコールステージで〇〇をします」と、ファンに公約し楽しませることも。
しかしそんな“アンコールステージ”が、今アーティストたちの間で「もはや罰則」とささやかれていると、韓国メディアのインサイトが報じていたので、紹介したい。
なぜそんな風潮になりつつあるのか。それは最近のアンコールステージが、アーティストの実力評価の場となりつつあるからだという。
生放送で進行される音楽番組の場合、難易度の高いパフォーマンスと、メンバー当日のコンディションを考慮して、大部分の出演者がボーカルやコーラスの入った音源(AR)を使用し、そこに生歌をかぶせるという手法を取る。しかしアンコールステージでは、それらが除去された、いわゆるカラオケが使用されるため、彼・彼女たちの歌唱力が知られる場となる。
実際、韓国のオンラインコミュニティーでは、放送直後から1位となったグループのアンコール映像についてのメンバー別ランキングが、毎週投稿されているそうだ。不安定な音程を披露したり歌詞を間違えたりすると、卑下や嘲笑混じりの悪口を浴びせることもあるという。こうして、本来ならファンと祝福し合いながら楽しむはずの時間が、いつしか画面の向こうにいる無数の視聴者に審査されるという様相に変化してしまったというのだから、アーティストが複雑な気持ちを抱くのも納得だ。
5月1日に1stフルアルバム「UNFORGIVEN」をリリースしたLE SSERAFIM(ルセラフィム)は6番組全てで1位を記録し、グランドスラムを達成。出演した番組でもちろんアンコールステージを披露したのだが、ある番組でメンバーが不安定な歌唱力を披露したとして「残念なステージだった」と否定的な反応が散見された。
数年前にも、TWICE(トゥワイス)が披露したアンコールステージで特定メンバーに厳しい意見が寄せられ、それが大きな話題に。
その一方で、MAMAMOO(ママム)、NMIXX(エンミックス)、STAYC(ステイシー)、NCT、BTOB、SEVENTEENなどは揺るぎない実力を披露し、評価がさらに高まるという現象も起きている。
世代が変わっても、アイドルのライブ力不足を指摘し続ける反応については、ある種の問題であり課題となっている。それでも一部では「最近のK-POPアイドルは“パフォーマンス重視”の傾向にある」と、柔軟に受け入れてもいるようだ。
韓国の音楽(アイドル)ファンは、少々手厳しいような印象を受ける。一糸乱れぬ団体ダンス、激しいパフォーマンスでもリップシンクをせず、かつブレない歌唱力。実際に目の当たりにすると、確かに圧巻であり、感動ものだ。しかし、いつどんな時も完璧な人間などいないわけで「そんな日もあるさ」と笑顔で見守る寛容さも、持ち合わせていたいものである。