藤波辰爾が監修 アントニオ猪木さん秘蔵写真集 闘魂の瞳に「蛇ににらまれたカエル。動けなかった」

山本 鋼平 山本 鋼平
「アントニオ猪木写真集 1960~1988」の発売記念トークショーに登場した藤波辰爾(右)と小佐野景浩氏=都内
「アントニオ猪木写真集 1960~1988」の発売記念トークショーに登場した藤波辰爾(右)と小佐野景浩氏=都内

 プロレスラーの藤波辰爾(69)が2日、都内で開かれた「アントニオ猪木写真集 1960~1988」(ワニブックス刊)の発売記念トークショーに参加。開始前に取材対応し、昨年10月に死去した師匠、アントニオ猪木さんの思い出を、秘蔵カットとともに語った。

 ともに登壇した元ゴング編集長の小佐野景浩氏がメディア代表、この日は所要で欠席したミュージシャンのファンキー加藤がファン代表、藤波がレスラー代表を務め、監修の3人で東京スポーツ社が保有する秘蔵写真から厳選。1960年のデビューから、政界挑戦を前にした1988年までの雄姿が2冊組写真集に収められた。

 同書特製ケースのカバーは藤波が選んだ。藤波が「この写真が目に飛び込んできたんですよ。この猪木さんの目の鋭さに僕は何度もやられました。試合中のときも、この目でね、蛇ににらまれたカエルみたいに動けなかったですよ。同じ経験をしたレスラーは多いんじゃないかな」と説明すると、小佐野氏は「しかも、これは79年の8・26夢のオールスター戦のチケットに使われたんですよね。これを藤波さんがパッと選んだのがすごいです」と付け加えた。

 小佐野氏は写真集「闘魂」のカバーを選択。NWFベルト姿に「猪木さんはIWGPのイメージが強いですけど、実は猪木さんがIWGPを巻いたのは1年だけなんですよね。すぐ返上して、藤波さんとベイダーで決定戦をして、藤波さんがチャンピオンになっている。猪木さんにとっては舌出し事件とかIWGPは黒歴史なんですよね。NWFの方がストロング小林、大木金太郎、ルー・テーズ、ビル・ロビンソン、ハンセン、ホーガン…新日本の歴史を作ったのはこちらの方です」と語った。

 写真の選考および監修について、藤波は「僕は最終的に偏見で選びました。どれも外したくないんだけどね。完全にファン目線でしたね」と明かし、小佐野氏は「この試合は外しちゃいけないというのがあるじゃないですか。その試合は必ず入れようというのと、できれば日本プロレス時代の燃える闘魂ではなくて、若獅子と呼ばれていた写真を入れたかった。あとは馬場さんとの写真ですね」と語った。この言葉を受け、「これなんか最高ですよね」と、猪木とジャイアント馬場さんが一緒に笑顔で入浴するページに見入った藤波は「僕は付き人で猪木さんの背中を流していたんですけどね。この光景はファンとしてはたまらなかったね。ふたりはすごく仲良かったですよ。馬場さんの付き人は佐藤昭雄さん。ときたま交代して僕が馬場さんの背中を流してね。広い背中でしたね。(洗髪して)馬場さんも猪木さんの頭の形も覚えてますよ」と付け加えた。

 両者は、それぞれが選考した写真3枚と、その思い入れを語った。

 藤波は1枚目に入門直後、猪木さんの付き人時代の写真を挙げた。「僕が16歳で猪木さんの後ろでカバンを持って歩いています。僕の恩人の北沢さんという方が猪木さんの付き人をやっていたんですが、僕に入門許可が出る前に、僕がカバンを持って、日本プロレスの幹部連中に既成事実を作っちゃえということでカバンを運ばせてもらったんです」と当時のエピソードを明かした。小佐野氏から「これ、藤波さんが入門して2週間後の写真ですね」と指摘されると、「まだデビュー前だったけど誇らしくてね。緊張しましたけれど」と振り返った。

 2枚目は米ニューヨークで猪木と一緒に笑顔の写真を挙げた。「猪木さんがジャケットを着ていて、僕は上着を持っていなくて寒かった。それを見た猪木さんに買ってもらったトレンチコートを着ていますね」と嬉しそうに語った。

 3枚目は自身の結婚式、猪木さんから祝福を受けているもの。「猪木さんが28歳で結婚したので、オレも28歳で結婚、同じ京王プラザで結婚するぞと思っていました。懐かしいですね」と笑顔を見せた。

 小佐野氏は1枚目にテネシー遠征中のカットを選択。「猪木さんの田吾作スタイルです。猪 木さんはタイツと裸足か、シューズを履いているかが多く、田吾作スタイルは珍しい。ぶかぶかなので、おそらく他の選手のものをプロモーターに言われて履かされたんじゃないか。とても貴重な写真です」と語った。藤波は「田吾作スタイルは当時、必ず通過点というか、皆がやっていた。僕は一回もないんですけど、今はやってみたかった気もするなあ」と応じていた。

 2枚目は猪木さんが1969年の試合でジャーマンスープレックスをかけた写真を挙げ「当時は日本人でジャーマンかけるのはヒロ・マツダさんだけだった。マツダさんは、猪木さんはアゴが長いからジャーマンは無理だ、と言っていたんですよ。そんな中に、ゴッチ教室で学んだ、すごくきれいなジャーマンですよね」と説明した。藤波は「猪木さんは体が柔らかいから。デカイ選手へのジャーマンは勇気が必要。僕も一回、相手はトンガの130キロくらいだったかな。手が回らず彼の体が落っこちてきて、前歯2本が彼の背中に刺さってめくり折れましたから」と、師匠のジャーマンの魅力を補足した。

 3枚目は大木金太郎戦の写真。「猪木さんって攻めてるのもカッコイイですけど、やられている時もカッコイイ。頭突きを何発もやられて、最後はナックルを1発入れてバックドロップで…。来いっていう目がスゴイですよね」と理由を明かした。

 藤波は今も現役レスラーとして試合に臨む。「もう第一線ではないけれど、それでもリングに上がると、どこかで猪木さんが見ている感覚がある。表情が険しくなるというか、気を許しちゃいけないと思う。そういった部分は若い人にも伝えたい」と話していた。

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