好評放送中のNHK朝ドラ「舞いあがれ!」のような町工場が、ドラマの舞台と同じ東大阪にある。金属加工会社「盛光SCM」の代表取締役・草場寛子氏(49)だ。初代社長の祖父が1961年に創業し、3代目社長として奮闘している。
ドラマではネジ工場を経営する父がリーマン・ショックの影響で経営危機に陥る中で急死。母が社長を務めることになると、ヒロインがパイロットになる夢をあきらめ、母を支えて会社の再建、発展に務める。草場社長は「ドンピシャですね」と自分と重なる部分があるという。実際、番組ディレクターから取材も受けた一人で、撮影や考証で協力をしている。
勤めていた会計事務所にいた税理士の先輩と一緒に独立して起業した時に、父から会社経理、財務、経理をみるように頼まれたことをきっかけに入社。リーマン・ショックの波をモロに受けながらも、父が退いて後継者問題が浮上するなか、09年に社長に就任した。
「35歳で突然社長になったんですけど、異業種から突然、業界のことも分からずに社長になったんですよね」と振り返る。メーカーの下請けで注文が減り、コストも抑えられてしまう。「50年の会社の中で、経営不振に陥った。会社をつぶしたらアカン。何とかしないと。(ヒロインの)舞ちゃんと同じですよね」。
ドラマではヒロインが取材に訪れた新聞記者にパイロットになることを諦めたことを聞かれ、「後悔していません」と言い切る場面がある。当初、会社の社長になる予定ではなかった草場社長も共感する。全盛期には東大阪に約1万社あった町工場も6000社に減少。コロナ禍で現在は5000社を切ったと言われている。
その中で考えたのは〝下請け体質〟からの脱却だ。下請けの仕事を続けながらも「会社をアピールするのは社長、営業だけではない」と組織全体で動くようにした。2014年に自社ブランド「NEEL」を立ち上げ、職人技が光るデザイン照明の製品などを企画、制作、販売。会社のブランド力アップを図っている。
東大阪の町工場には「下請け文化」と「横請け文化」があるという。「横請け文化」とは、自社だけではできない物を他社の協力を得て完成させる。これぞ町工場の技術の結晶。ドラマでは同じように飛行機部品のネジを作り上げていた。
草場社長は本業以外でも東大阪の町工場を盛り上げようと、「こーばへ行こう!」の実行委員長として町工場のツアーなどを行っている。3月には「町工場の社長と巡る!舞いあがれ 東大阪日帰りツアー」でガイド役を務める。他にも後継者の育成につながるイベントなども企画している。
「やりがいですか?マチづくりにつながるモノづくりをしたいですね」と日々を頑張っている。オンリーワンの技術が集まる街の灯を消さず、再び輝きを取り戻し、街の活気を生み出す。自身の夢に向かって、草場社長は舞いあがっていく。
町工場の社長と巡る!舞いあがれ 東大阪日帰りツアー
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