スピードワゴン・小沢 芸人ポリシーは寺山修司から 心酔ぶり全開

山本 鋼平 山本 鋼平
イベントを行った佐井大紀監督(左)とスピードワゴン・小沢一敬=都内
イベントを行った佐井大紀監督(左)とスピードワゴン・小沢一敬=都内

 歌人、劇作家、映画監督の寺山修司を心酔するお笑い芸人のスピードワゴン・小沢一敬(49)が9日、都内で開催された「日の丸~寺山修司40年目の挑発」(2月24日公開)のイベントに、佐井大紀監督(28)とともに登壇した。

 1967年に放送され、放送直後から抗議が殺到し、閣議でも問題視されたため郵政省がTBSを調査したドキュメンタリーが、映画作品でよみがえった。サブカルチャーの先駆者、時代の寵児だった寺山修司が構成を担当し、街ゆく人々に「日の丸の赤は何を意味していますか?」「あなたに外国人の友達はいますか?」「もし戦争になったらその人と戦えますか?」などの挑発的な質問を、次々とインタビュー。TBSディレクターで寺山修司への憧れを抱く佐井監督が「現代に同じ質問をしたら、果たして?」 という思いから、自ら街頭に立った。

 小沢は「僕が考える寺山さんは軽やかな人。こういうヘビーな視点の作品でも、こんな見方もあるよね、という寺山さんらしい実験だと思った」と感想を口にした。「今はSNSなどで情報がたくさんあり、自分の好きな世界観を決めてしまいがち。だけど寺山さんは、視点を変えれば知的に面白いものはたくさんあると気付かせてくれる」と魅力を挙げた。その代表的著書「書を捨てよ、町へ出よう」に触れ「僕なりになぜこのタイトルになったかを考えた。寺山さんは短歌や俳句をやるので、タイトルを英語にしたら(発音が五・七・五に近い)『GO CITY GO』になる。これはオレの言葉遊びだけど、ひょっとしたらと思わせる魅力、既存の価値観をひっくり返すところがある」と熱く語った。

 小沢の芸人としてのポリシーも、寺山修司から影響を受けたという。長い病室生活のため見たことがない海の存在を信じられない少女に、少年がバケツでくんだ海水を見せて説明するも、少女には届かないという作品を挙げた。そして「これが僕のテーマです。報われないけれど伝えたい。そういう人に憧れてる、寺山修司の切ないけれど軽やかなところに憧れている」と続けた。

 美意識に満ちたポリシーを披露された佐井監督は「かっこいいですね…なんか、甘~いですね」と、小沢の相方・井戸田潤の得意フレーズを拝借して、緊張しながら返答。小沢は「そう言ってくれるのは、おすすめだよ」と、うれしそうに応じていた。

 また、小沢はこの日に用意された食事はサンドイッチだったことを挙げ「日の丸弁当だと思っていたのに」と残念がり、会場を沸かせていた

 佐井監督は「寺山修司のふんどしで相撲を取ってしまった」と謙そんしつつも、寺山修司の構成と同様に、無機質で無遠慮な質問を自ら再現。「50年前以上でも日の丸というセンシティブな題材を取り込んで、知的なユーモアと社会に刀を突きつけながら形にする、クリエーティブな軽やかさが格好良かった。見る人を当事者に巻き込んで、皆の心を揺れ動かすクエスチョンマークに、寺山さんはなろうとしたのかな」と語った。

 1967年のドキュメンタリーは2月9日、翌々日の2月11日に初めて建国記念日が祝日として実施されることに合わせて放送された。1964年の東京五輪の3年後、1970年の大阪万博の3年前という年が、2025年の大阪万博を前に、2022年に撮影された今作の歴史的意義を語った佐井監督。その上で「当時の番組は毎週放送されていた『現代の主役』という枠で、今の『情熱大陸』のようでした。岡本太郎、藤子不二雄、円谷英二が取り上げられている中で〝今週の主役は日の丸です〟って番組だったんです。ヤバイですよね。その発想がすごいし、よく会社も許したなと。同じテレビマンとして、先輩たちを格好いいと思いました」と話していた。

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