AV業界を代表する現役女優の一人である川上ゆうの写真集が9日に発売される。親友であるアーティスト・写真家の「SAKI OTSUKA (サキ・オオツカ)」が10年間にわたって撮影した集大成的な作品「裸(ra)川上ゆう写真集」 (東京キララ社、税別3000円)だ。今年3月で40歳の節目を迎えた川上が、よろず~ニュースの取材に対し、被写体となった30代の10年間が刻み込まれた写真集への思いやAV女優としての原点を語った。
川上は2004年に別名義でデビューし、07年に改名して15年になる。今回の写真集は、業界で出会ったオオツカがAV女優を引退後、写真家デビューした12年から撮影を始めた。
「当初、撮影から8年後に出る予定だったのですが、コロナで2年間中断したことで、ちょうど10年という区切りとして出せたのはよかったと思います。前向きに時を待ち、よりいい作品を残しましょうと」。川上はそう回顧し、親友の被写体となったことに「まったり自然にいるところを撮ってもらった印象です。私は『仮面をかぶってるんじゃないか』とよく言われるんですけど、サキちゃんも最初の入口は『仮面がいつか破れるんじゃないか』と思って、撮影させてくれないかという話だった。結果、『ゆうちゃんは、ゆうちゃんだったね』と言われました」と笑う。
浴室やベッド、和室、海と夕日…。写真集では、さまざまな場面で自然体の川上が、濃厚な色合いのカラーと陰影のあるモノクロで表現されている。画家でもあるオオツカは「私はいわゆるアダルトのヌード写真って感覚で撮影していないから、作品として、モノクロも出したかった。カラーも濃い色の出るカメラを使っています。プライベートショットも入れました」と解説。川上は「サキちゃんが色合いや表情を選んでくれて、2人でつくったという感じがします」と振り返った。
そして、川上は「写真集はこれが最後だと思っている」と打ち明けた。
「自分の満ちた瞬間があると思うのですが、それが今かなと思っているんですよ。10年間のいい時を撮ってもらって、これが最後だから、私の丸ごとを全部見てもらいたいです。40代から50代って、もちろん、きれいな方はいっぱい、いらっしゃいますが、なんか勝負だと思うんですよ、女として(笑)。だんだん、体も老いていき、どういう風に私は老人になっていくかみたいなことも考えたりしながら、ちょうど今が見どころかなと思っているので。見てくださる方も一緒に年を取りながら、この写真集を見て『落ち着く』と思っていただけたらうれしいです」
また、オオツカも「10年間の記録を撮ったというのはこれで最後だと思う。1人の人間の10年ってなかなか追えるものではないから」と補足した。
今年、成人年齢の引き下げを機にAV業界の在り方が問われている。AV女優になる動機として、高額なギャラ(実態は違っても、そのイメージ)も指摘されるが、川上はそのこと自体は否定しない。
「私の場合ですけど、元々は、好奇心とお金だったと思います。私はファッション業界にいて、1か月のお給料が安かったんですよ。初任給が7万9000円、その後が11万円くらいで、アパレル業をやりながら他に何ができるかなと考えた時、職場がシフト制だったので、(時間の都合がつく)アダルト業界を選びました。出演料が取っ払い(※撮影当日に現金払い)の時代だったので、毎回楽しみに朝を迎えて、お金をいただいたら、その日にファッションビルに行って使うみたいな、そういう20代だったんですけど、その中で『川上ゆう』が作り上げられて、居場所を作ってくれたというのはありますね。最初の入口はなんであれ、人生を変えるんだなと。人気がなくなったからやめようとかは思わないし、違う形でも『川上ゆう』という形を残せたらいいなと。この写真集もそうですし」
川上は都内で店を営む。それもまた「違う形」の一つだ。
「『ラビリンス』というラウンジバーのお店を2018年から新宿の歌舞伎町で始めました。自分の切り替えとしてはいいきっかけだと思って。コロナで2年ほど営業できなかった時期もありましたけど、脱がない仕事という面では、接客業とか人と話すことが好きで、自分でも向いていると思う仕事なので今後も続けていきたいです。カウンターを挟んで話すスナックみたいな形態ですね。店の雰囲気が好きで通ってくださる方も増えたので、私も癒やされています」
12日まで出版記念写真展が東京・神保町の芳賀書店で開催中。3日に都内で行なわれたレセプションにはクラウドファンディングで支えたファンが大阪や北海道など全国から集まり、女性の姿もあった。19日には川上とオオツカによるサイン&撮影会が神保町の書泉グランデで開催される。
AVという世界を起点に仕事の幅や出会いを広げていく。