俳優・東出昌大(34)がこのほど、宮川博至監督(42)と「よろず~ニュース」のインタビューに応じた。公開中の主演映画「とべない風船」に対する思い、山中の古民家で暮らす日々の生活などについて語った。(全2回の1回目)。
瀬戸内の島を舞台に、数年前の豪雨災害で妻子を失って以来、孤立している漁師の傷ついた心の癒やしと再生を描く物語。2018年の西日本豪雨を間近で体験した宮川博至が監督・脚本を務めている。
主人公の島の漁師・憲二を演じた東出はオファーを受けたときの心境について、「最初、台本を読んで、すごい素敵な台本だったので。これまで監督の過去作を見ていなかったので、それを見て、あ、こういう映像、映画を撮られるなら、すごい素敵な作品になると思いました」という。役柄については「撮影に入ったらきつくなるだろうと思いましたし、実際にきつかったです。憲二になって、子供と妻を被災して亡くした思いで現場でいるので、その気持ちになる瞬間はきついです。撮影間からずっと憲二の気持ちでアイドリングしている状態で、本番になったらアクセルを踏んでトップに持って行くような」と振り返る。
災害がフラッシュバックするシーンに関しても「心が引き裂かれるような思い。東出としてではなく、憲二としてですね。(役が)降りてくるというのは、イタコさんみたいな人ですし(笑)、芝居はそういうのとは違うので。役になりにいくという感覚に近いと思います」と、自分自身の感情ではなく、あくまで役に入り切ることに全身全霊を注いだ。
昨年2月14日に当時の所属事務所との専属契約が解消。現在はフリーとして、一人で活動している。オファーはメールや電話などで直接自分で受ける。「面倒くさいこともありますが、自由もありますし、両方ですね。ネガティブなイメージよりもポジティブな状態のことが多い」と前向きだ。「面倒くさがりではないんですけど。ああ、こういう仕組みになっているんだと新しく知ることだったり、メール早く返さないと行けないなあと思ったリすることはありますし。でも、マネジャーさんがいたときからそうでしたね」と笑う。
自由を感じることに関しては「事務所にいたときから、仕事が重なったら選んだりはしていましけど。選ぶ自由さというよりも、たぶんコロナがあって社会のシステムが変容して、リモートの打ち合わせもできるような時代になったし、例えば、自分が関東近郊の山に住んでいて、東京での仕事を方々に連絡して、できればここでまとめていただきたいみたいなことを言うと、東京にいる時間も少なく済むので。そういうところは、マネジャーさんを通して間接的にやりとりするよりも、早かったりはしますよね」とフリーになった利点を挙げた。
最近の癒やしについては「人だと思います。いろんな人との交わりや交流が癒やしになっています。まあ、ひとりの時も癒やしですし。基本的に伸び伸びとやっています。山での生活だけでなく、仕事での人との交わりもですね。会えばうれしいですし、喜びです」と語った。(②に続く)
◆東出昌大(ひがしで・まさひろ)1988年2月1日生まれ。埼玉県出身。モデルから俳優に転身し、2012年に映画「桐島、部活やめるってよ」で俳優デビュー。第36回日本アカデミー賞新人俳優賞等受賞。主な出演映画は「寝ても覚めても」(18年)、「コンフィデンスマンJP」シリーズ(19~22年)、「スパイの妻」(20年)など。現在は関東近郊の山中で自然と暮らしている。