田中ケロ氏、リングアナ生活43年での〝ベストコール〟は すべてが最高潮となった一戦

杉田 康人 杉田 康人
アントニオ猪木さん
アントニオ猪木さん

 新日本プロレスの元リングアナウンサーで、名調子でアントニオ猪木さんの名勝負を盛り上げた田中ケロ氏(63)が、43年に及ぶリングアナ人生での〝ベストコール〟を挙げた。

 ケロ氏は1980年(昭和55)8月22日、新日本プロレスの品川プリンスホテル・ゴールドホール大会のジョージ高野―荒川真戦でリングアナデビュー。それまでパウンドで発表していた体重をキロに変え、スーツだった衣装は宝塚風のいでたちに。前口上も導入し、新日本の黄金期を彩った。

 マット界での、リングアナの立ち位置を大きく変えたケロ氏だが「『好きなことをやれ。おもしろいことをやればいい』と、アイデアを聞いてくださった」と、猪木さんから反対されることはなかったという。

 一番印象に残るベストのコールとして、新日本の95年5・3福岡ドーム大会でのアントニオ猪木、北尾光司組―長州力、天龍源一郎組の試合を挙げた。タキシード姿で入場した猪木さんはマイクを握り「平壌において、プロレス史上19万人の前で、ガウンを脱いでまいりました。きょうはガウンがありません。この下はタイツとシューズを履いております!」と説明。観客がどよめく中、リング下でタキシードを脱ぎ、戦闘態勢を整えた。

 同年4月、北朝鮮・平壌での興行「平和の祭典」で、猪木さんはリック・フレアーと対戦。「闘魂」と描かれたリングガウンを脱ぎ捨て〝ガウンは平壌に脱いできた〟との名言を残している。天龍、長州、北尾さん、猪木さんの順でコールしたケロ氏は「コールを始めるいいタイミングで、リング下で猪木さんがタキシードを脱ぎ始めた。北尾をコールした後はどうしたらいいんだろうな…と思っていたが、見事なタイミングでリングに入ってきてた」と振り返る。

 猪木さんは間合いを図るように、北尾さんがコールされている時にリングイン。ケロ氏の「アントニオ~猪木~」のコールに合わせ、赤い闘魂タオルを振り見得を切った。「レスラーの気持ち、ファンの気持ち、リングアナの気持ち。ひとつになれば、気持ちよくコールできる。考えてできるものじゃなく、感覚でいくしかないですけど…」と、すべてが最高潮となった福岡でのリングを思い返した。

 ケロ氏のコールに合わせガウンの帯を解き、バッと両手を挙げていた猪木さん。「コールに合わせて、ガウンを脱いでくれていました。(ケロ氏の)年齢によりコールのスピードは違ってきて変化してきたのですが、全部合わせてくれていました」と、あうんの呼吸を懐かしんでいた。

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