正月に妻の実家に行き、義母が出してくれたお節料理に舌鼓を打ったのはいいが、うっかり口にした感想から気まずい雰囲気になってしまった。そんな時、あなたならどうする?「大人研究」のパイオニアにして第一人者、『大人養成講座』『大人力検定』など多くの著書を世に送り出してきたコラムニストの石原壮一郎氏が「大人の切り返し講座~ピンチを救う逆転フレーズ~」と題し、その打開策をお伝えする。
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【今回のピンチ】
正月に妻の実家へ。お節料理を食べて「この栗きんとん、最高ですね。今までで一番おいしいです!」とホメたら、義母が「今年はスーパーで買ってきたの」と……。
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「配偶者の実家」は、世界で最も緊張する場所のひとつ。そんな怖いエリアで、背筋も凍るトラップにかかってしまいました。
お正月に妻の実家を訪れたら、義母が「お恥ずかしいんだけど」と、テーブルにお節料理を並べてくれました。ここは何かホメないとと思ったのが運の尽き。いつもの年は自作していたはずなのに、まさかのスーパーで調達した栗きんとんでした。
義母は穏やかな口調で「去年の暮れは忙しくて、いくつか買ってきてお重に詰めたのよ」と言っていますが、たぶんショックを受けているでしょう。さて、どうリカバリーすればいいのか。
「いや、違うんです。無理に何かホメなきゃと思って言っただけで、本心じゃないんです」と正直に白状したら、さらに深みにはまり込んでしまいます。「いやあ、よく味わってみたら、やっぱりいまいちかな。お義母さんの栗きんとんのほうがおいしいですね」と、あわてて前言を翻すのもけっこう最悪。人としての信用を一気になくしそうです。
ここは強引に笑い話にしてしまうのが、気まずさを吹き飛ばす唯一の方法。「アハハハ。正月早々、やっちゃいました」と明るく笑いながら頭をかき、「味の分からない婿で申し訳ありません」と謝ります。「このあいだも家で同じ失敗をして、妻に怒られたんです」と続けてもいいでしょう。
きれいな大失敗をしでかした場合は、半端にごまかそうとせず、いかに潔く謝るかが大切。そうすれば笑い話にはなっても、悪い印象を与えることはありません。むしろ「娘はなかなかのナイスガイと結婚した」と、株が上がる可能性もあります。
ただし、同じ失敗を繰り返すことは許されません。フォローするつもりで、よりによって(自家製である可能性が低い)伊達巻きに箸を伸ばして、「これ最高ですね」とホメるのは、あまりにもウカツ。それは義母にケンカを売っているに等しい行為です。
いったん気持ちを落ち着けて、紅白なますなど自家製の可能性が高いものに箸を伸ばしつつ、一拍置いて「これは、お義母さんが作ったんですか?」と尋ねましょう。そうだと確認できたら、しっかり噛みしめた後、力を込めて「やっぱり手作りが一番ですね。すごくホッとします」と称賛します。
わざとらしさは否めませんが、気は心とはこのこと。義母も義父も、こちらの頑張りに免じて、和やかな雰囲気を保ってくれるでしょう。2023年も、あちこちに存在する大人の落とし穴に気を付けつつ、いい一年をお過ごしください。