クリスマスの時期に出現する日本の妖怪がいるという。ジャーナリストの深月ユリア氏が文献から引用し、識者に話を聞いた。
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もうすぐクリスマスだが、クリスマスに出現するといわれるのは、「サンタクロース」のみではない。この時期に出現しやすいとされる日本の妖怪もいるのをご存じだろうか。
【吹消婆(ふきけしばばあ)】クリスマスといえばろうそくだが、江戸時代の妖怪画集「今昔画図続百鬼」に描かれている「吹消婆(火消婆ともいわれる)」という老婆の妖怪はろうそく含め世の中のありとあらゆる灯を消す恐ろしい老婆の妖怪だ。
「水木しげるの続・妖怪事典」によると、「宴会をしている時など、訳もなく火が突然に消えてしまったり」「宴会帰りの客がちょうちんをつけて夜道を帰ろうとした時、そのちょうちんのろうそくの火が消えることがあると」「吹消婆が息を吹きかけて火を消した」からだという。明るい雰囲気の灯ほどは狙われやすいといわれているので、なるべく暗い色のろうそくをともすことで、ターゲットにされなくなるかもしれない。
【煙々羅(えんえんら)】鳥山石燕による江戸時代の妖怪画集「今昔百鬼拾遺」で描かれている煙の妖怪。サンタクロースは「煙突を通って部屋に入ってくる」といわれているが、 煙々羅も煙突を好む。煙突の煙の中にぼんやりと人の顔のようなものが浮かび上がれば、それは 煙々羅かもしれない。
【鈴彦姫(すずひこひめ)】クリスマスといえば、ジングルベルの鈴だが、妖怪「鈴彦姫」も鈴が大好きだ。 鈴彦姫は、鳥山石燕の「百器徒然袋」に登場する頭部に神楽鈴という巫女(みこ)が舞を踊る時に持つ鈴のような顔をした女性の妖怪だ。 鈴彦姫は縁起のよい妖怪で、神楽鈴には神が降臨させる役目を持つ。鈴彦姫が現れたら、是非仲良くして来年の縁起稼ぎをしよう。
【ナマハゲ】東北地方に伝承ある年末に訪れる来訪神(神の使い)だ。名前の由来は「怠け者を懲らしめ、災いを祓い、祝福を与える」という「ナモミハギ」という東北地方の方言にあるという。鬼のような恐ろしい面に大きな出刃包丁を持って出現し、「泣く子はいないか」「悪い子はいないか」と街を練り歩くことから、昨今は「ブラックサンタクロース」の都市伝説と由来が同じではないか、という都市伝説もささやかれている。
妖怪に詳しい作家の山口敏太郎氏によると、 「ブラックサンタクロースはサンタと同じく長いひげを生やした老人だが、毛皮や地味な色のローブに身を包み、長い棒や灰の袋を持っている。子どもたちにお祈りができるか尋ね、できると答えたいい子にはお菓子を、できないと答えた悪い子は灰袋で叩く、ないしはうれしくないプレゼント(石炭や石)をプレゼントするのだという。なお、北西ドイツ、オランダやベルギー 、フランスなど、地域によっていくつかのバリエーションがある。これらの妖怪たちはただ恐ろしいだけの存在ではなく、子供に教え諭す一面があり、ナマハゲと共通している」という。
ナマハゲは姿は恐ろしくも来訪神である。ナマハゲが現れても、日常の悪事を正直に釈明し、酒をふるまって丁重にもてなすと、「へばな~」「元気にしろよ~」と帰っていくという。
【雪女】山口氏によるとクリスマス時期には「雪女、ゆきんこ(雪女の子供)、雪入道など雪にまつわる妖怪が現れやすい」という。特に古来、日本人になじみがあるのは「雪女」だろう。雪女は「死」の象徴である白装束をまとい、男に冷たい息を吹きかけて凍死させたり、男の精を吸いつくして殺すという伝承のある妖怪だ。雪女から身を守るには「湯をかけると消える」という言い伝えもある。
超常現象研究家の鈴田之神助氏によると「雪女の正体は妖怪、雪の中で行き倒れになった女の幽霊、雪の精など諸説あります。私は雪女らしき人影を二度見ていたと思います。一度は長野でドラマの撮影が終わってホテルに戻った時、部屋の窓を開けると白樺のような木々が並ぶ中に白い着物を来た女が立ち、こっちを見ているように感じました。そして二度目は仙台にいた頃になるのですが、広い野原の雪の降る日でした。このクリスマス時期は雪が降りやすいので、雪女は見やすくなるかもしれませんね!」
縁起の良い妖怪はぜひ仲良くして、恐ろしい妖怪は対策を練って楽しいクリスマスを迎えよう。