今年2月24日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、まもなく10カ月になるが、終わりが見えないまま、新年を迎えようとしている。果たして、2023年にはどのような局面を迎えるのだろうか。ジャーナリストの深月ユリア氏がウクライナ出身の国際政治学者であるアンドリー・グレンコ氏に見解を聞いた。
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ウクライナ戦争が開戦してから9カ月近くがたつ。現在、ウクライナ戦争の戦況はウクライナ軍が反転攻勢に出ており、ロシア軍はヘルソン州の州都ヘルソン市から撤退しているが、停戦の可能性はあるのか。
ウクライナはかねて停戦交渉の条件として、 領土の回復や国連憲章の尊重、戦争によって生じた損害に対する賠償、戦争犯罪者の処罰、ロシアが二度と侵攻しないことの保証など5つの項目を掲げていた。12月1日、バイデン米大統領は「ロシアがウクライナ戦争を停戦するつもりなら、プーチンと対話する」と表明したが、2日、ロシアのペスコフ大統領報道官はそれに対して「撤退が条件の協議は拒否する」と述べた。
筆者は今月9日に都内で行われたウクライナの国際政治学者アンドリー・グレンコ氏の講演会(中央大学元講師の酒生文弥氏主催)を取材した。
グレンコ氏によると、プーチン大統領に残念ながら停戦合意は難しいという。「ロシアはウクライナが建国(1991年)してから、30年間ずっとウクライナを『取り戻そう』としていました。 プーチンは何が何でも、どんな犠牲を払ってもウクライナを手に入れたいのです」
停戦どころか、来年にかけてウクライナ戦争は激化する可能性があるそうだ。
「ロシアは冬の間に撤退したロシア兵の戦力を回復し、さらに新たに動員したロシア兵を来年春に派兵する狙いがあります。しかし、現在、ミサイルが足りず調達先を探してイランと交渉中です。そして、ウクライナもヘルソン州を奪還してからクリミアも奪還するつもりです」
グレンコ氏によると、プーチン大統領はゼレンスキー大統領に対する怒りも大きいという。
「2019年のウクライナの大統領戦ではロシアはゼレンスキーがポピュリスト(大衆迎合主義者)で大統領になったらロシアの言いなりになると考え(ゼレンスキーは西側諸国に嫌われているオリガルヒのイーホル・コロモイスキーに政治資金を支援されていたので、当選しても操り人形になるかと懸念されていた)、推していましたが、ゼレンスキーは大統領になってからウクライナを独立国家だと考えNATOにも加盟しようとしたのです」
プーチン大統領の勝手な思惑だったが、それに反したゼレンスキー大統領の方針に対してプーチン大統領には「復讐」の思いがあるという。
「ロシア軍からしたらウクライナに対する『復讐』の意味もあります。『ロシア様の支配を受け入れなかった、けしからん奴ら』をジェノサイド(※集団殺害)するつもりなのです。しかし、ウクライナ軍に勝てないから、ウクライナでインフラを破壊して民間人を虐殺しています。『街を破壊して焼け野原にして、ロシアの新しい街をつくる』のがロシアのやり方です」
では、プーチン大統領が辞任したら、停戦するのか。
「残念ながら、プーチンが辞任したら、実権を握ると考えられる軍部はさらなる過激な思想を持つ人々がいます。特に若い人々の方が過激な思想を持っていて、停戦どころか、核兵器を使うリスクもあるでしょう」
では、どうすれば終戦するのか。
「独裁国家に『話し合い』は通じません。武力によりロシア軍をウクライナ全土から撤退させるしかありません。そのためには、さらなる武器の支援が必要です。そして、重要なことですが、日本は大量の中古車をロシア輸出していますが、それはロシア軍に『武器に類似したもの』を支援していることになります。どうか日本の中古車の輸出を止めてください」
多くの西側諸国がロシアに経済制裁している中、日本のロシアへの中古車輸出が大幅に増えている。ロシアの中古車の輸入先の9割近くが日本だそうだ。しかし、物資不足のロシアでは「中古車が軍事転用される」可能性も指摘されている。残念ながら「停戦が難しい」なら、最大限にウクライナ支援をして、一刻も早くウクライナを勝たせるしかないということだろう。