「食べて太って寝て…なぜクマは糖尿病にならないのか」冬眠に関するマジメな研究

篠原 かをり 篠原 かをり
画像はイメージです(Luca Pape/stock.adobe.com)
画像はイメージです(Luca Pape/stock.adobe.com)

すっかり肌寒くなって、朝が辛い季節になった。

食欲の秋にお腹いっぱい食べて、そのまま、春が来るまで暖かい布団にくるまれて眠って過ごせたら、最高だ。そんな空想に心を寄せ、人間の著者は軽々しく「冬眠したい!」と思ってしまうが、実は冬眠はすごい能力なのだ。

冬は人間以外の動物にとっても過酷な季節である。

外気温が下がるので、カエルのような両生類や、カメやトカゲのような爬虫類といった変温動物は動けなくなり、地中や岩の隙間でじっとしながら冬を越す。

変温動物が姿を隠し、植物も減るのでそれらを餌とする動物もエネルギー源の獲得が難しくなるので無駄な体力を使わないために冬眠をする。

冬眠する動物の一種であるシマリスは体温を外気温と同じくらいまで下げて、1週間に1回程度、目を覚ました時に排泄や食事を行い、春がくるまでウトウト過ごす。心拍数は1分間に10回以下、呼吸数は3〜4回と仮死状態となる。

クマの冬眠は特殊で体温は数℃程度しか下がらないが、冬眠中は食事も水もとらず、排泄もしない。しかし、驚くべきことに十分に栄養を蓄えたメスは冬眠中に出産し、授乳を行う。

 彼らは決して寒さに負けて布団から出られないわけではない。冬眠には、代謝の抑制、筋肉の維持、臓器機能の維持、低体温耐性、食欲の切り替えといった様々なメカニズム、冬眠する力が必要とされる。

 このような冬眠する力に着目した研究も存在する。

学術誌「iScience」に掲載されたワシントン州立大学の論文では、ハイイログマが冬眠前に莫大なカロリーを摂取し、数ヶ月の間横になって過ごすことを毎年繰り返しても糖尿病にならないことに着目し、この「健康的な肥満」のメカニズム解明を目的に研究を行った。いずれ、クマの冬眠のメカニズムが人間の糖尿病の予防や治療に繋がることが期待されている。

他にも学術誌「PLOS ONE」に掲載された、広島大と北海道大学の共同研究では、冬眠時の長時間の不活動や栄養不良の中でも、クマの筋肉がほとんど衰えないことに着目している。

冬眠中のツキノワグマから抽出した血清とともに人間の筋肉細胞を培養したところ、総タンパク質量が増加するという興味深い結果が報告されている。

人間の加齢に伴う筋肉量の減少やそれに伴う寝たきり防止、効率的なリハビリテーションへの応用が期待されている。

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