ポーランド着弾ミサイルの真相は?グレンコ氏「残念ながらウクライナのミサイル」「賠償責任はロシアに」

深月 ユリア 深月 ユリア
写真はイメージです(and4me/stock.adobe.com)
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 ウクライナ国境に近いポーランド東部にミサイルが着弾した。ロシアの攻撃か、ウクライナの迎撃ミサイルだったのか?ジャーナリストの深月ユリア氏が海外の報道を引用し、ウクライナ出身の国際政治学者であるアンドリー・グレンコ氏や現地住民にも見解を聞いた。

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 ウクライナ国境に近いポーランド東部プシェヴォドフ村で15日午後、ミサイルが着弾し、2人が死亡した。ポーランドは、集団安全保障体制をとる軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国なので、他国に攻撃された場合NATOの条約第5条に基づき、NATO軍が反撃しなければならないという協定が定められている。これがロシアの攻撃ミサイルか、ウクライナの迎撃ミサイルなのかが問題視されている。

 同日、ロシアはウクライナ各地にウクライナのエネルギー関連施設を中心に激しいミサイル攻撃を繰り広げていた。そして、 ミサイルが墜落したプシェヴォドフ村から約10キロの場所にドブロトヴィルスカ火力発電所とポーランドとウクライナを結ぶ送電線があり、ロシアのミサイル攻撃の標的になりやすい場所だ。ロシアの攻撃ミサイル、ウクライナの迎撃ミサイルいずれも可能性があるだろう。

 英メディアBBCが米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンシアン氏、 米シンクタンク外交問題評議会の安全保障専門家、J・アンドレス・ギャノン氏に取材した情報によると「S-300システムの一部の可能性がある」という。 S-300はロシア製の攻撃用ミサイルだが、ウクライナも迎撃ミサイルとしても使っているものだ。

 複数の海外メディアによると、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は「ロシアがNATOに対して軍事攻撃行動を準備しているという兆候はない」「おそらくウクライナの防空ミサイルだ」という見解を示し、「ウクライナに対して違法な戦争を続けているのはロシアなのでロシアに責任がある」とロシアを非難した。

 ポーランド現地メディアによると、ポーランドのドゥダ大統領は「ウクライナの迎撃ミサイルの可能性がある」という見解を示しつつ、「証拠はなく、いずれにしても侵攻したロシアに責任がある」とした。また、バイデン米大統領も同様の見解を示した。一方、 ウクライナのゼレンスキー大統領は「軍の報告によると、ロシアが発射したミサイルだ」「NATOが動く必要がある」と主張し、現地を調査する予定だ。

 筆者はウクライナの国際政治学者で「ロシアのウクライナ侵略で問われる日本の覚悟」の著者、アンドリー・グレンコ氏にインタビューした。

 -今件は、どちらの国が発射したミサイルでしょうか?

 「100%断定できるのは、現地調査が終わった後ですが、大変残念ながら、ウクライナのミサイルでしょうね。大統領など閣僚レベルの発言なので、おそらく証拠があっての発言かと思います。ウクライナは被害者なので、西側の閣僚はウクライナが不利になるような発言はしないでしょう」

 -NATOがロシアと戦争したくないから、実はロシアのミサイルなのに、ウクライナのミサイルだと言い張っている可能性はあるか?

 「ロシアのミサイルだとしても故意ではないので、戦争する要件にはならないですね。参戦する条件はNATO加盟国の安全保障が明らかに脅かされる、つまり、ロシアがポーランドに何発もミサイルを撃ってくるという状態ですから」

 -今件はどのように対応すべきか?

 「ウクライナのミサイルだと断定されたら、潔く遺族に謝罪と賠償を行うしかありません。賠償責任はロシアにあります。ウクライナ軍によると、14日のロシアのミサイル攻撃は、開戦日から最大規模で、エネルギー施設と民間マンションを狙われました」

 -このような出来事が繰り返さないためにはどうすればよいか?

 「(1)今件はロシアの戦争犯罪ですから、ロシアの責任を追求すること。そして、以前から言っていることですが、(2)NATOがロシアをもっと強く非難すること、(3)ウクライナにより強い、より性能のいい防空装備を提供すること。ウクライナの防空装備、ミサイル防衛が強ければ強いほど、ヨーロッパ全体はより安全になります」

 筆者がポーランドの古都クラクフに住む46歳の男性に話を聞いたところ、「ポーランドのメディア報道によると、ウクライナがルートを誤射した迎撃ミサイルの可能性が高いそうです。しかし、多くのポーランド人はウクライナの迎撃ミサイルより、ロシアの攻撃ミサイルと核兵器を恐れます。(ウクライナが占領されたら)次にポーランドが侵攻されるのが怖いです。NATOが動き出す前に多くの市民が犠牲になるでしょう。早くロシア軍に撤退して欲しいです」と訴えた。

 今件により、隣国の自分の死をおそらく全く想像していなかった人が犠牲になるという戦争の悲惨さが、さらに世界に知れ渡ったことだろう。

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