「うる星やつら」の新作アニメが始まりました。元旦にアニメ化が発表されて約10か月。首を長くして待っていた人も多いのではないでしょうか。筆者もそのひとりです。特に1981年から1986年まで放送された初代テレビアニメを見ていた者にとっては、あの「うる星やつら」が令和の時代にどのように生まれ変わるかが非常に楽しみでした。
元旦に公開されたティーザービデオでは、ラムのイラストが少しずつ現れて、最後に振り向くだけという至ってシンプルな動画で、BGMは初代アニメの初代主題歌である「ラムのラブソング」のイントロ。そして、あたるとラムがお互いの名前を連呼するものでした。声優は一新されています。「あたる」=「古川登志夫」、「ラム」=「平野文」というイメージがこびりついている世代にとって、キャストの変更はちょっと不安ではありました。しかし、ティーザービデオやのちに公開されたPVを見る限り、あたる役の神谷浩史もラム役の上坂すみれも、違和感はありませんでした。「うる星やつら」という世界観が既に完成されており、作り手も受け手も共通認識を持っていたからではないでしょうか。
ちなみにオリジナルキャストである古川登志夫はあたるの父役、平野文はラムの母役の声を当てており、こういう粋な計らいに往年のファンはグッときます。
ところで、この声優とキャラクターのイメージ。これまでもいろんなパターンがありました。特に長期にわたる作品や、有名すぎる大ヒット作品にはさまざまな交代劇があります。
「ドラえもん」は26年間馴染んできた声優陣を2005年に一新しました。同時に、キャラクターデザインをより原作に近いものにリニューアル。声優だけが入れ替わると強い違和感があったかも知れませんが、キャラクターデザインも変更されたので、受け入れられやすかったのではないでしょうか。とはいえ、新キャストはそれぞれ旧キャストに近い印象の声優が選ばれています。これも「ドラえもん」というブランドが確立しているからでしょう。
しかし、この「ドラえもん」のイメージは当初から出来上がったものではなく、紆余曲折もありました。現在も続くテレビ朝日系列のシリーズの前に日本テレビ系列の旧「ドラえもん」が存在。こちらは1973年に約半年だけ放送されたシリーズで、再放送、ソフト化、ネット配信などが一切ない幻のシリーズとされるものです。
ドラえもんを演じるのは富田耕生で、途中から野沢雅子にチェンジしています。富田耕生は手塚アニメに登場するヒゲオヤジを担当するようなおじさん声です。ドラえもんの声がおじさんぽいというのは今ではちょっと想像がつきにくいですね。そして二代目が「ドラゴンボール」の孫悟空でおなじみの野沢雅子。悟空とドラえもんが同じ声というのも不思議な感じです。こちらの日テレ版が終了し、1979年からわれわれのよく知るテレ朝版「ドラえもん」が始まります。ドラえもんを演じるのは大山のぶ代。三代目となります。富田耕生とも野沢雅子とも違うタイプの声ですから、この頃はまだドラえもんのイメージがまだ定着していなかったのでしょう。大山のぶ代自身、自分の声がはたしてドラえもんに合っているのか悩んでいたようですが、原作者である藤子・F・不二雄(当時は藤子不二雄)が「ドラえもんってこういう声だったんですね」と優しく声かけしたことにより、大山は堂々とドラえもんを演じることができるようになったという逸話があります。大山のぶ代によってドラえもんのイメージは確立されたのです。
「ドラえもん」よりも長く続くアニメといえば「サザエさん」。放送開始が1969年ですから、50年以上も放送されています。50年も続けば当然、声優も変わります。ただし、「ドラえもん」のようにあるタイミングで一斉に変更ではなく、「サザエさん」の場合は主要キャラを演じる声優らのまちまちの理由により、まちまちのタイミングで交代がなされています。放送開始から磯野家で変わらず演じるのは、サザエ役の加藤みどりとタラちゃん役の貴家堂子のみ。メインキャラもサブキャラも幾度も交代しています。筆者も番組エンディングのクレジットを見て「あ!声優が変わってる!」と気づくことがあります。「サザエさん」もそれぞれにイメージが固まっているため、声優もそれまでのイメージを壊さないないように選ばれているようです。