お笑い芸人によるプロレス団体「西口プロレス」の興行が25日夜、東京・新宿FACEで開催され、10月に相次いで亡くなった〝燃える闘魂〟アントニオ猪木さん(1日に79歳で死去)、とザ・ドリフターズの仲本工事さん(19日に81歳で死去)と交流のあったアントニオ小猪木(51)の呼びかけにより、追悼のテンカウントゴングで昭和の時代から輝き続けた〝両雄〟を送り出した。
第5試合のメインイベントとなる西口プロレスヘビー級選手権試合で、王者の小猪木は3度目の防衛戦としてジャイアント小馬場の挑戦を受けた。「実現しなかったドリームマッチ。『打倒ジャイアント馬場』を掲げた猪木さんの思いに引っ張られるような形で組まれた」(小猪木)というカードだった。試合は小馬場の目つぶしなどの反則攻撃で劣勢となった小猪木が敗れて王座陥落。だが、このままでは終われない小猪木は「もう1度やらせてください!」とアピールし、観客の後押しもあって、その場で再戦が決定。新王者・小馬場の初防衛戦として再び相まみえ、最後は小猪木が延髄切りで勝利して王座奪回した。
マイクを手にした小猪木は猪木さんと仲本さんとの思い出を語った後、「猪木さんのプロレスとドリフターズの体を張ったコントの集結された形が、ある意味、西口プロレスなのではないかと私は思っております」と総括。さらに「仲本さんが今年7月に行なわれた81歳のバースデーパーティーで最後に歌われた曲が『マイ・ウェイ』でした。猪木さんの『この道を行けばどうなるものか、迷わず行けよ、行けば分かるさ』といい、二人のスーパースターには『我が道』があった。今後、お二人の思いを引き継いで頑張ります」と誓った。
小猪木は「(興行の)最後にテンカウントゴングをするかどうか迷いましたが、猪木さんの関係者や仲本さんの奥様に連絡して、『ぜひ盛り上げてください』ということだったので、みなさん、お付き合いいただいてよろしいでしょうか!」と呼びかけ、ゴングが10回響く間、観客全員が起立して黙とう。小猪木による「猪木さんの1、2、3、ダー!からの仲本工事さんのポーズ」で締めくくった。
リングの次は舞台だ。11月3日から6日まで都内で上演される劇団羊風舎旗揚げ公演「都市伝説康芳夫~モハメド・アリに魅せられた国際暗黒プロデューサー」(新宿シアターブラッツ)に、小猪木は猪木さん役で出演する。
1976年に猪木さんとモハメド・アリの対戦をプロモートした伝説の興行師・康芳夫氏(85)の半生を描いた舞台で、小猪木は「見えないアリ」と戦う。アリ役は不在。落語のように、1人で演じながら、そこにはいないはずの相手の存在を観客の脳裏に浮かび上がらせる。稽古場では、当時の試合を再現すべく、目の前にアリがいる想定で、グラウンド状態からキックを繰り出す練習を重ねていた。
小猪木は「猪木さんの人生においてアリ戦は外せないですし、アリさんも『俺たちは真剣にやった』と誇りに思っていらした。そういう意味で力をフルに発揮したい。『1人でやるの?』という素朴な疑問に対して、僕は『あたかも、モハメド・アリが見えるように戦いますから』と返した。当時の試合と70年代をイメージした音楽に合わせて、そこでアリがチョウのように舞い、ハチのように刺すイメージでダンスを踊っているようなシーンを楽しんでいただきたいです。僕は当時5歳。オンタイムで試合は見ていませんが、後に写真を見た時に両者の色気をすごく感じた。根本的な人間の色気という部分を出し切れたらなと思います」と意欲を示した。