新海誠監督「すずめの戸締り」で3.11を正面から描いた 風化恐れ「焦りのような気持ちが1つあった」

松田 和城 松田 和城
「すずめの戸締り」完成報告会見に参加した新海誠監督
「すずめの戸締り」完成報告会見に参加した新海誠監督

 アニメ映画「すずめの戸締り」(11月11日公開)の完成報告会見が25日、都内で行われ、メガホンを取った新海誠監督(49)が参加した。

 「君の名は」(16年)「天気の子」(19年)の大ヒット作に続く、3年ぶりの新作。日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる扉を閉めていく少女・すずめの開放と成長が描かれる。

 本作では、地震描写および、緊急地震速報を受信した際の警戒音が流れるシーンがあると、22日、公式ツイッターで説明されたように「3.11」を正面から描いた。新海氏は、東日本大震災の〝風化〟について、10年に生まれた娘とのやり取りを交えながら話した。「彼女と話していても震災の記憶はないわけで。気づけば僕の観客の多くが10代で、共通体験としての震災というのが、どんどん薄くなっていて」。20年1月ごろに映画の企画書を製作した。「今であればまだ、同じ気持ちを共有できるかもしれないという焦りのような、今なんじゃないかという気持ちが1つありました」と説明した。

 新海氏は震災後の11年3月末、東京で桜が例年通りに咲く姿を見て、驚いたという。「こんなときにも桜は咲くんだと。こんな状況になっても、本当に人間と関係なく桜は美しく咲いて、どこまでも冷徹で僕らにとって無関心。それなのにこんなに美しいんだなっていうことに、本当に衝撃を受けたんです」。コロナ禍の20年3月も同様の感情になったといい「でも、その冷徹さと鋭利な美しさみたいなものを、僕の仕事のエンターテインメントとしての形で映画にできないだろうかという気持ちはずっとあの頃からありました」と振り返った。

 音楽を担当したRADWIMPSの野田洋次郎(37)と、会見の数日前まで製作するなど、多くのスタッフとギリギリまでこだわり抜いた最新作。出来栄えについて「ディズニーの影響を受けて始まった日本のキャラクターアニメーションの、1つの美しい映画の到達点。そういう形のアニメーション映画となったんじゃないかと思います」と自信を見せ、「もしかしたら今日本で1番面白い映画かもしれない。楽しんでいただければ」と笑顔で呼びかけた。

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