亡き母が残した17匹の猫を育てる元プロボクサーが堺市に保護猫カフェ開店 古民家の生活スペースそのまま開放

杉田 康人 杉田 康人
保護猫カフェを開店する島川大器さん
保護猫カフェを開店する島川大器さん

 亡き母が残した猫17匹を育てている大阪府の元プロボクサー・島川大器さん(37)が11月13日、堺市内に保護猫カフェ「猫家(ねこいえ)まさみ」をオープンする。17匹の猫が実際にすむ約16畳の部屋を、時間制で開放。孤児院開設を夢みた母の遺志を継ぐ島川さんは「大切な母さんの、夢の後を継いであげれたらと思った。ゆくゆくは保護猫を、里親につなげられることをしたい」と思いを語った。

 大阪市内で暮らしていた島川さんの母は、保護猫や野良猫を受け入れる形で多くの猫を飼っていた。2020年5月、心筋梗塞で亡くなった母の家で、多頭飼育崩壊の状態で残された猫たちを島川さんが発見。母が住んでいた家を借り続け、家賃やえさ代など月15万円かかる費用をまかない、18匹の面倒を見てきた。

 2021年には、猫のすみかに立ち退き問題が浮上。YouTubeで活動を知った視聴者が、堺市内にある古民家の提供を申し出た。18匹の猫は、新天地に大移動。島川さんは約400万円をかけ、2階部分を猫が住みやすい〝猫家〟として改造した。

 さんさんと降り注ぐ太陽の光を浴び、猫たちは思い思いの時間を過ごしている。ふだんの日常生活の場が、客とのふれ合いスペースとなる。「人も猫もゆっくりできるように予約制にして、この子たちがスタッフとして接客する」。行政の認可も下りた。支援者らに先行公開して、グランドオープンに向け改善点を洗い出していく。

 プログラマーを仕事にしながら、約2年半猫の世話中心の生活を送ってきた島川さん。プロボクサーは休業状態だったが、年齢制限で引退に追い込まれた。えさ代や病院代など、ランニングコストは月十数万円。さらに電気代の高騰などで、生活は苦しい。「入ってくるお金以上に出ていくものが多い。もう計算しないです…」と苦笑する。

 悲しい別れもあった。母が残した18匹のうち、オスの「がび」が7月に12歳で死んだ。最期まで助かると信じ治療を続けてきたが、体に負担がかかる治療をさせてしまったのでは…との後悔が残るという。「ほぼ助からないとわかっている状態の猫に、治療してあげることが猫の幸せだろうか。死に近づいている猫の治療をやめる飼い主に批判的な気持ちがあったが、決して非難されるものではないと気づいた」。残された猫の気持ちを理解しようと、さらなる愛情を17匹に注ぐ。

 保護猫カフェがゴールではなく、動物愛護団体を創り上げたいという島川さん。不妊去勢手術で繁殖を抑えるとともに、猫のえさやトイレの世話をし、不幸な猫を増やさないとするTNR活動(地域猫活動)にも関わる。「野良猫が日本からいなくなって欲しい。実現するために団体活動をして、大きな規模に広げたい。カフェがその収入源になれば」と理想を語る。

 保護猫カフェの屋号「まさみ」は、亡き母の名前だ。「母さんと一緒に進むとともに、自分の人生も歩み出したい。自分の人生とお金を取り戻したい。この子たちがお金を稼げるようになって、自分たちで生きるすべをつくり出せたら」との思いを込めた。亡き母の形見となった猫を守ろうと、自己の生活を犠牲にしてきた島川さん。自身と17匹の猫の自立へ向けて、大きな一歩を踏み出した。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース