来年10月から始まるインボイス制度。制度の対象となるのは1000万円以下の売上の事業主…と言えばまさに筆者!今まで納めていなかった消費税を納めなくてはいけなくなるかもしれない。
本来、皆が納めるべきものを免除されていると頭では分かっていても10%も引かれるのは正直痛い。そろそろ学ばなきゃと思っていた矢先、本制度について勉強できるというオンライン勉強会の存在を知り、参加することにした。
主催はひめじ芸術文化創造会議。講師を務めるのは、前田麻結さん(ゆい行政書士事務所 代表/行政書士)。
「インボイス制度は、副業・兼業の方にも関係があります。ただ、税務の申告について詳しくない方も多いようでした。なので、制度の説明をする際、確定申告や税の申告、消費税の仕組みなどから段階的に説明、解説するよう心がけました。基本の説明に重きをおいた感じです」(前田さん)
この狙いが良かった。筆者の場合、まさに消費税の本質を分かっていなかった。道理で何度インボイスの説明を見てもイマイチ要領を得なかったわけだ。
消費税は商品やサービスを購入したとき、つまり商品やサービスの最終消費者として客が負担している税である。例えば1500円の傘を小売店で買った時、150円の消費税を一度はその小売店で預かる。仕入れ時の消費税を差し引きした結果、卸売業者や製造業者などで合わせて合計150円が納められるようだ。
だが、筆者はすべての売り買いの度に消費税が累積してかかると思っていた。確かに一度は支払うのだが差し引きされる。是非はともかく、よく出来た仕組みである。
そこまで噛み砕かれて、その後のインボイス制度の仕組みが理解できたのである。
今回参加したメンバーの多くが、クリエイターやVTuberやミュージシャンなどで、筆者も主にデザイン業などで生計を立てている。多様なメンバーが揃った本会であるが、クリエイティブ関係向けた会を開催するに至ったのか? 主催のひめじ芸術文化創造会議の月ヶ瀬悠次郎さんに話を聞いた。
「コロナ禍が始まって比較的最初の頃に、文化芸術に携わる人々のなかに各種の公的助成を受け取れないケースがありました。それは助成金の申請手続き上の問題だけではなく、日頃から確定申告を含む税金のことをよくわからないまま、ほったらかしにしていたことに起因するものもあったように思います。芸術家はどこか世間から少し外れた特殊な世界観を持っていても良いとは思いますが、一方でコロナ禍のような大きなトラブルにおいて適切な助成を受けられるよう、最低限度の知識を身に着けたり手続きを済ませておくことが大切です。これから活躍する今どきの若手クリエイターの皆さんには、日頃の活動の中でそういった手続きやノウハウを取り入れてもらいたいと思っていました」(月ヶ瀬さん)
確かにインボイス制度を知らないまま施行されるとまずかった。インボイス制度は当初、ペンネームで活動する個人事業主の本名などを誰でもダウンロード可能だったが、個人情報の観点から批判が続出。
バーチャルのアバターで配信を行うVライバーのつぼみさん(仮名)も
「現行のインボイス制度だと、個人名がバレるかもしれないという観点を知れて良かったです」
と語っていたが、本会の約1週間後に国税庁が改善を発表した。
既に多くの人が勉強して問題提起したからこそ改善されたのだろう。クリエイターは世事に疎い人が多いが、やはり自分のためにお金や制度のことは意識しておいた方がいいと思う。
「会に行政書士の前田さんが参加してくださったのはとても良い機会でした。行政書士は税理士ではありませんので個別具体の税相談に応じることはできないものの、税に関する手続きや作業は隣接する業務であり、多種多様な業態の事業者にふれることもあるお立場です。クリエイターが知っていた方がいい制度はまだまだたくさんある。今後も様々な有識者を呼んで勉強会を行っていきたいです」(月ヶ瀬さん)
インボイス制度、既に登録はスタートしており施行まで1年を切った。まだ手付かずの方はいろいろな動画や各所でセミナーなどもある。関係ありそうな人は是非確認して欲しい。