安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者(42)をモデルにしたフィクション映画「REVOLUTION+1」が27日、国葬の日に合わせ都内のライブハウスで緊急上映され、メガホンを取った日本赤軍元メンバーの足立正生監督(83)がトークイベントに登壇した。
足立監督は「国葬だけは許せない。きょう上映するため、国葬の時にやりたいと思ってつくった国葬反対の映画。放っておいたらあかんのですよ。60%の人が反対しているのに、国葬を平気でやれるというのはどこかおかしい」と、作品への思いを語った。
8月28日にクランクインした映画は、まだ制作途中。完成版の公開を前に、国葬に合わせた50分の〝特別版〟を150人が見守った。国葬が始まった午後2時から上映がスタート。武道館前にいた足立監督と、ライブハウスを生中継でつないだ。
騒然とする武道館前で、足立監督は「花束を持って並んでいる人に『アベノミクスやアベノマスクでどういう利益を得ましたか』と質問したかった。そう聞いてみたくなる。利益共同体と思えるくらい。国葬の中身のなさが、はっきりしているじゃないですか」と、献花の列をながめていた。
山上容疑者をモデルにした主人公の「川上」を熱演した俳優のタモト清嵐(そらん、30)は「いろんな声があり、カスだの死ねだの(SNSで)書かれている。ぼくにとっての覚悟は、意見をぶつけられるだろうという覚悟。受けはするけど、流されないという覚悟」と、決意の主演だったことを明かす。
29日に上映を予定していた鹿児島市の映画館が「テロを賛美するのか」との抗議を受け、上映中止を決定した。脚本を担当した井上淳一氏(57)は「これを機に、表現の自由のことを考えてほしい。見ずに批判するということは、最低限の礼節をわきまえない恥ずべき行為」とし、上映をSNSなどで批判するタレントなどの声にも疑問を投げかけた。
足立監督は「英雄視はしないという前提で描いている。山上は苦しんだ青年である。これに尽きる。なぜ決起せざるを得なかったのか。愛という問題。一緒に生きる人間がいれば、決起せずに済んだ」と、銃撃事件を称賛する意図を否定する。
2022年末に約80分の完成版を公開予定で、追加撮影も行うという。ピンク映画も手がけ、若松孝二監督の盟友だった83歳の監督は「批判や責任はすべて引き受ける。正面から批判すればいいのに、陰湿なやり方をする。陰湿な人間を相手にする時間はない」と、固い信念をのぞかせた。