TOKYO MXなどで放送中のテレビアニメ「リコリス・リコイル」(リコリコ)では、公式ツイッター(@lycoris_recoil)とは異なる、作中に登場する喫茶店の〝カフェアカウント〟「喫茶リコリコ(@LYCO_RECO)」がフォロワー数15万人超(26日現在)の人気を誇っている。本編に描かれていない日常のワンカットやキャラクター同士のやり取り等が更新され、作品の世界観により深く没入させる役割を担う。同ツイッター開設の経緯と狙いを、担当者に聞いた。
作品は日本の平和を守る秘密組織「DA」のエージェント「リコリス」でありながら、表向きは普通の和カフェ「喫茶リコリコ」で働く錦木千束と井ノ上たきな、凹凸コンビの日々を描くオリジナルアニメ。7月の放送開始から二人を含む魅力的なキャラクター、その関係性の丁寧な描写などが好評で、最新話放送時には毎回ツイッターのトレンド入りを果たす。キャラクターデザインには人気のいみぎむる氏が起用され、多くのファンによるイラストがSNSに投稿されている。
ツイッターアカウント「喫茶リコリコ」はアニメ放送前の3月26日に初ツイート。放送開始まで千束、たきなが働く同店の内観や外観、提供されるメニューを紹介した。開始後には描き下ろしイラスト、キャラクターの掛け合いによる次回予告、キャラクターが回答するお悩み相談の画像を投稿。アニメ本編で描かれなかった日常、人間関係等を描き、世界観の構成、演出を担っている。
第4話放送後の今月1日には、同話で、たきなが千束に選んでもらった私服姿で線香花火をするイラストを投稿。千束目線の「たきなと花火しにきたよ 花火大会なくて残念だけど、こういうのも楽しいよね~ ちさと」の文言と共に投稿されたツイートは、26日現在で1万6000以上のリツイート数と7万6000件を越える「いいね」を獲得。「私服最高」「こういう日常シーンがたまらない」など絶賛の声が寄せられた。
取材に応じた宣伝プロデューサー・アニプレックスの高橋里美氏によると、「喫茶リコリコ」アカウントのアイデアは、足立慎吾監督によるものだという。第1話内で、同店で働く4人の写真をSNSにアップするシーンがあることから、本編に登場するものと同じIDで立ち上げられた。当初は〝作品公式アカウント〟として運用する予定だったが、高橋氏はより作品の世界観・キャラクターの魅力を伝える場所として活用できないかと考えた。「機械的なお知らせだけでなく、そこに生きたキャラクターがいるような物語性が見えるとアニメ本編を更に楽しめるのではないか」。公式アカウントと差別化し、独自の情報発信を行ってきた。
第1話、「喫茶リコリコ」で働く4人は記念写真をSNSにアップ
高橋氏は、昨今のVtuberなどの流行から「キャラクターの日常」「キャラクター同士の関係性」に惹きがあると考えた。「アニメ本編を見ていないときでも、千束たちを身近に感じられ、先々の物語への想像を膨らませるようなことができたら」。いわゆる〝こぼれ話〟はテキストでの短編集、ボイスドラマなどで公開されることが多い。一方で、宣伝という観点では「作り込まれた1000文字、5分よりも、今はライトな1ツイートの方がファンの方の日常に届きやすいと感じるんです」と見解を示した。「特にアニメファンの方が1番触れているSNSがツイッターじゃないでしょうか。Vtuberの方も主戦場はユーチューブですが、ツイートも細かく発信している。今の時代はSNSコミュニケーションが合っているのかなと思いました」と説明した。
「公式だけじゃなくこっちもおもしろいよ」などと、フォローを勧めるファンも見受けられるという。放送前まで1万人未満だったフォロワー数は現在15万人超で、公式ツイッター(フォロワー数25万人)と比べても、存在感を誇っている。高橋氏はアカウントの今後について「日常写真(イラスト)の投稿は今後も物語の進行に合わせて続けていきたいと考えているので楽しみにしていただきたい」と話した。
令和の時代に合わせた〝物語型プロモーション〟によりさらなる魅力が生まれたアニメ「リコリコ」。本編はクライマックスに向けて、シリアス寄りの展開に移っていくようだ。24日にはこれまでの雰囲気とは一変した新たなキービジュアルが公開された。高橋氏は見どころについて「千束、たきな〝2人の絆〟がどうなっていくのかが最後まで描かれるので、そこに注目していただきたい。ビジュアルにいるキャラクターたちは終盤も活躍するので千束、たきな以外のキャラクターに注目している方もぜひ最後まで見ていただけたら」と呼びかけた。