2022.08.27(Sat)

大凶が大当たりの「不運おみくじ」が密かな人気　尼崎の洋食屋さんに「忍たまファン」が集まる理由

読者の皆さんはおみくじは好きだろうか？ちなみに筆者は今年の正月は大吉が出るまでおみくじを引いた。そう、一般的におみくじは大吉が良いのである。だが今回紹介するお店で提供しているおみくじは、大凶が当たりなのだと言う。なぜ、そんなおみくじが出来たのか……？兵庫県尼崎市で飲食店「バルバルキッチンアメリ」を営む晃幸さん、倫子さん夫妻にお話を聞いた。

「バルバルキッチンアメリは洋食屋であり、デザートや珈琲などの軽食も楽しめる喫茶店でもあります。元々は、2人別々のお店を開こうと考えていました。3人の子育てを夫婦で協力しやすいメリットもある為、1つのお店として2020年11月にオープンしました」（倫子さん）

料理は晃幸さんが主に担当。チキン南蛮、カレー、オムライス……どれを食べてもホテルさながらの本格的な味わいだ。

「料理人になる夢を持って、フレンチ・イタリアン・洋菓子・和食など様々なお店で修行をしました。実は、その少し前までプロのギタリストを目指していたのですが、怪我で諦めることになり塞ぎ込んだ時期もあったので、その反動で結構頑張ったと思います（笑）」（晃幸さん）

アメリはけっして便利な立地にあるわけではない。これまでは主に地元の住民が通う、知る人ぞ知る洋食屋だったのだが、この数カ月で大きな変化が現れたのだという。それはアニメ「忍たま乱太郎」ファンの来店。

忍たま乱太郎の作者の尼子騒兵衛さんは、尼崎出身・在住。登場キャラクターの多くは、名前に地名が使われているため、市全体がファンにとっての聖地となっている。アメリの場合はお店が善法寺町のすぐ近くにあるため、登場人物の善法寺伊作くんを愛するファン等が訪れるようになったというわけだ。

「長らくファンに愛されている市内の『尾浜うどん風車の郷』さんに不運おみくじのアイデアを貰ったのがキッカケです。さっき（取材日）も茨城県からのお客様が来たんです！全国からのお客様が増えるなんてオープン時は想像もしていませんでした。忍たま乱太郎が日本中で愛されている作品なのだと肌で感じています。流石今年30年目の国民的アニメ、尼崎の宝です」（倫子さん）

冒頭でふれたアメリが提供する「不運おみくじ」は、凶や大凶が多めのおみくじ。善法寺伊作くんは作中で不運なキャラクターとして描かれている為、善法寺町を訪れるファンの間では、どうやら不運を喜ぶのが流行っているそう。善法寺町を訪れた方のTwitterを覗いてみると

「あぶない善法寺の地で●●●踏むところだった」

「風強すぎてウケる」

「（大凶の写真と共に）伊作パワーを引き寄せてしまった」

などの呟きが散見される。

「200枚作った不運おみくじも、たった2ヶ月足らずでそろそろ補充が必要です。感謝ですね。また善法寺伊作くんは保健委員会で薬草に詳しいとのことなので、現在オリジナルのハーブティーとそれに合うケーキ等を研究中です。ファンの人が喜んでくれるものを提供したいです」（倫子さん）

お店を訪れたことのある、尼崎在住ファンのサキさん（30代女性）は

「不運大魔王の善法寺くんにちなんで、くじを引けてとても幸せです。お店の方がファンに喜ばれるものは何かを真摯に考えてくださっているのが伝わってきます。地元民による、全国の忍クラさんを歓迎したいという温かい心遣いが感じられてとても嬉しいです。あと、味や盛り付けへのこだわりが凄いのに、非常に安いですね。これも尼崎ならではだと思います」という。

今後の抱負について

「『食満豆腐おおもと』さんという近くの老舗店のおからを使ったビスコッティをずっと提供しているのですが、あそこも忍たま乱太郎の聖地なんです。尼崎の愛と、全国の忍たまファンの方達が私たちのお店で混ざり合う感じを大切にしていきたいです」

と倫子さん。