「間違いないっ!」の決めぜりふで、日本テレビ系「エンタの神様」などで人気を博したお笑い芸人・長井秀和(52)が、12月25日投開票の西東京市議選に無所属で出馬する意向を示している。2021年8月に自らの政治団体「すこやかな共生社会をつくる会」を立ち上げ。以後1年間、同市内の駅前などで雨の日以外早朝から辻立ちを続けている。
西東京市の西武池袋線保谷(ほうや)駅前に、日焼けした長井の姿があった。自宅から徒歩で、市内の駅へ向かい通勤通学客にあいさつ。道中60人ほどに声をかけられるという。「おおむね好感触です。YouTubeの企画って思われた時もありましたが…。駅よりも、歩いて駅まで来るのが大事って思ってます」。知名度はいまだ健在だ。
コロナ禍が、政界を志すきっかけとなった。都内で飲食店を経営するなど、さまざまな事業を手がける長井。周囲で事業破たんや一家離散に至るケースを見てきたという。「セーフティネットを作るって、議員の力が大きいと思ったんですよね。補助金や協力金とかいろいろあったのも知っていますが、そこにも差別というか区別、格差がありました。実際に議員さんが後押しというか役所に行くと通るんですよね。議員さんがこれがいいよ、とか教えてくれるんです」と振り返る。
無所属で出馬する理由を、政党というくくりそのものへの疑問とした。「無所属だと市内の困窮された方々に関して、すべての方々に手を差し伸べることができるというところはある。大政党になっちゃうと区割り、管轄や縄張りがありますから。役所みたいに議員もたらい回しになっているわけですよ。票と金にならないような人は後回しみたいなところは正直あります。本当に市のためにやれるような議員っていうものが必要なんじゃないか、私がなろうかなっていうのが最初ですね」と動機を語る。
国政選挙への思いはなかったのか―との問いには「ないですね」と即答。地方議会の重要性を強調した。「身近に起きていることに関して、どこまで改善できるか。国会議員というと、立身出世の感覚でなっている方もいる。私は立身出世みたいな欲はないし、お金儲けしたいとかもない。自分が生活している所の暮らしや命を守れるとか、そういうところがいいなと思っています」と語気を強めた。
西東京市の課題として、知名度と存在感のなさを挙げ「地域振興をもう少し効果のあるやり方をするべき」と力説した。市内対象店舗でのキャッシュレス決済で最大25%還元するキャンペーンが行われていたが「もともと税金でそのぶんをまかなっているわけですから。西東京市っていうものをアピールできるようなものを仕込んで仕掛けていかないといけない。お客さんを呼び込んでいく形にしないと、あんまり先はないんじゃないか」と指摘する。
広告代理店任せになっている地域振興にも、疑問を投げかけた。「例えばにぎわいフェスタみたいなのをやるとして、広告代理店にお金を突っ込んで果たして効果があるのか。年間1億円くらいは広告費用で使われているが、本当に5分の1に抑えられる。制作会社の知り合いに頼めば、タダでできるんですよ。テレビのネタになるようなことを1個仕込めば取り上げてもらえる。さんざん広告代理店にお金を抜かれているという現状を考えると、少なくとも西東京市はストップしたい」と、芸人生活で培ったノウハウや人脈を生かすという。
創価学会員として知られていた長井だが、10年ほど前に脱会した。政治と宗教の関係に触れ「政教分離ってことをいま取り組むいい機会。宗教団体の選挙活動は禁止すべきだと思っている。政治活動はいいと思うんですけど、選挙っていうのは、もともと宗教法人を取った時の定款に書いてませんからね。特定の候補を応援するためにビラを配ってポスターを貼って電話をかけて、個別訪問して…。おかしいでしょ。そういうことはやっぱりしっかり区別すべき」と熱く語った。
安倍晋三元首相銃撃事件でクローズアップされた「宗教2世」問題にも言及する。80代の親の宗教活動を50代の子が憂える〝宗教8050問題〟を、SNSでも発信している。「親の宗教をやめてもらいたいけども、やめさせるわけにもいかない。親の世代の宗教活動ってのはもう止められないんですよ。宗教は違えど、親問題で非常に悩んでいるのは同じだなというのはある。戻らない蛇口の水みたいなもので、マーライオンみたいにずっと出ちゃってるんだよな…」とした。
英検1級を持ち、日本の英語教育にも一家言ある。田無市と保谷市が合併して誕生した西東京市。長井は「田無と保谷という確執がある。いまだに政治の世界において、どっちが主導権を取るのかっていう話が続いている。元・田無と元・保谷が、今でも根深い西東京。間違いないっ!」と、愛する地元の現状打破を訴えた。