この夏、コロナ禍が「第7波」に突入し、新規感染者の急増が深刻になっている。誰もが他人事ではなく、自身も含めて、身近に陽性判定を受ける人がおり、療養期間のため職場を離れるといった状況に接している状況だ。そんな時の言葉のやり取りで配慮すべきことは?「大人研究」のパイオニアにして第一人者、「大人養成講座」など多くの著書を世に送り出してきたコラムニストの石原壮一郎氏が「大人の切り返し講座~ピンチを救う逆転フレーズ~」と題し、自身の感染経験も踏まえて、その対応策をお伝えする。
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【今回のピンチ】
2日前にいっしょにお酒を飲んだ友人から、「コロナで陽性になっちゃった。感染させちゃったかも」と連絡があった。今のところ体調に異変はないが、どう返すか?
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新型コロナウイルスの「第7波」は、収まる気配がありません。一日の新規感染者が全国で20万人を超える日が続いて、友人知人が感染したという話もよく聞きます(何を隠そう私も7月初めに感染しました)。
重症化の可能性は高くないとはいえ、もちろん感染しないに越したことはありません。一定期間は療養生活を送る必要があったりなど、厄介な病気ではあります。
そんな中、2日前にいっしょにお酒を飲んだ友人からLINEが届きました。「ごめん、コロナで陽性になっちゃった。このあいだ濃厚接触したから、感染させちゃったかも」と書いてあります。今のところ体調に異変はありませんが、感染してるかどうかは神のみぞ知るところ。どう返信するのがいいのか、けっこう悩むピンチな状況です。
こういうことはお互い様であり、そもそも友人が〝加害者〟で自分が〝被害者〟とは限りません。たまたま無症状の自分から友人にうつした可能性だってあります。相手が「自分がうつしたかも前提」で書いてくれている心遣いは、きちんと汲み取りたいところ。極めて素朴なタイプなら「お前にうつされたかも」という書き方をしてきそうです。
同レベルの素朴さで「おいおい、勘弁してくれよ」と返したら、友人は「こいつとは距離を置こう」と決意するでしょう。「どこでもらったの?」と、相手を困らせるだけで何の意味もない質問をするのも論外です。
まずは「知らせてくれてありがとう」と感謝を述べて、体調を気づかうのが大人としての基本。その上で、
「俺は今のところ元気だけど、こっちがうつしたのかな。だとしたら申し訳ない」
と、自分は健康であることを伝えて、こっちが〝加害者〟という可能性を想定しつつ謝っておくのが、お互いに温かい気持ちになれる美しいやり取り。「薬局で検査キットを探してみるよ」と、いちおう行動を起こす意思がある姿勢も見せておきます。
幸いにして相手が軽い症状なら、辛気臭い話をしていても仕方ないので、せっせと軽口を叩き合いましょう。「友達の中ではお前が初めてかな。常に一歩先を行ってるね」「このまま俺の方は何ともなかったら、ツキを信じて宝くじを買ってみるよ」といった毒にも薬にもならないやり取りを交わすことこそが、何よりのお見舞いです。
その後、症状が出てきて、やっぱり感染していたということになっても、相手を責める言葉を発するのは絶対にタブー。ついポロっと出てしまいがちなだけに、細心の注意が必要なピンチと言えます。新型コロナとの付き合いも長くなり、必要な「対策」もどんどん新たなフェーズに入っていきますね。