電車内で着席中、乗ってきた高齢者が目の前に立ったので席を譲ったところ、拒絶された経験はあるだろうか。さらに「年寄り扱いするな!」と元気なお年寄りから怒られることも。そんな時、あなたならどうする?「大人研究」のパイオニアにして第一人者、『大人養成講座』『大人力検定』など多くの著書を世に送り出してきたコラムニストの石原壮一郎氏が「大人の切り返し講座~ピンチを救う逆転フレーズ~」と題し、その対処法をお伝えする。
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【今回のピンチ】
微妙に混んでいる電車内。年配の男性が目の前に立ったので「ど、どうぞ」と腰を上げたら、ムッとした口調で「いや、けっこう!」と拒絶された……
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腰を上げるまでには、さぞ激しい迷いがあったことでしょう。ありったけの勇気を振り絞って行動を起こしたら、恐れていた最悪の展開になってしまいました。
「あなたみたいな人がいるから、若い世代が席を譲らなくなるんだ。ここは気持ちよく譲られるのが年寄りの役目でしょうが!」
ああ、そう説教してやれたら、どんなに気持ちいいでしょうか。しかし、実行したら間違いなくケンカになります。
妄想の世界での反撃はさておきとして、中腰のまま固まっているわけにもいきません。何らかの次の一手が必要です。
スマートなのは、平静を装った穏やかな口調で「そうですか。でも、私は次でおりますので、よかったらお座りください」と言って、ドアの近くに移動してしまうこと。実際に次の駅で降り、さりげなく移動して別の車両に乗り込みましょう。
ただ、平和ではありますが、敵(もはや敵です)に背中を見せた屈辱感を味わう羽目になります。どうせ二度と合わない相手なので、果敢にぶつかっていくのも一興。そのまま腰を下ろして、笑顔でこう話しかけます。
「差し出がましいことをして失礼いたしました。足腰がお強いんですね。どうやって鍛えていらっしゃるのか、私も将来の参考にしたいので、ぜひ教えてください」
相手はきっとうろたえるはず。居たたまれなくなって遠くに行ってしまったら、こっちの勝ちです。万が一話に乗ってきたら、大げさに相槌を打って感心しましょう。いずれにせよ、周囲の人たちが心の中で称賛の拍手を送ってくれている気にはなれます。
後日また似た状況になったときも、「もし断わられたら、この攻撃を繰り出そう」と心の準備をしつつ腰を上げれば、もう怖くありません。その高齢者も、こんな目に遭うなら今度は素直に座ろうと決意するでしょう。お互いにめでたしめでたし、です。