日本には眠りが足りない!ウィズ・コロナでハイブリッド勤務者が抱える悩み 「睡眠カフェ」の試み

北村 泰介 北村 泰介
コーヒーを手にくつろげる駅構内の「睡眠カフェ」。ハイブリッド勤務者にとっても、つかの間の休息の場となるか?=埼玉県のJR大宮駅
コーヒーを手にくつろげる駅構内の「睡眠カフェ」。ハイブリッド勤務者にとっても、つかの間の休息の場となるか?=埼玉県のJR大宮駅

 日本社会には「眠り」が足りない。フランス・パリに本部を置く経済協力開発機構(OECD)が昨年公表した調査によると、OECD加盟・パートナー国33か国のうち、「日本は睡眠時間が最も少ない国」との結果が出た。そうした社会状況を背景に、コーヒーを主力商品とする食品メーカーのネスレ日本(本社・神戸市)がJR東日本とタッグを組み、埼玉県さいたま市のJR大宮駅構内にビジネスパーソンらを対象にした「STATION BOOTH supported by ネスカフェ 睡眠カフェ」を運営している。OECDなどのデータを踏まえ、同社の担当者にブース利用の実情やビジョンを聞いた。

 OECDの調査によると、1日当たりの平均睡眠時間の長さは日本が442分(7時間22分)で、33か国のうち最下位だった。これまで、他機関の調査も含めて、日本よりも若干、平均睡眠時間が少ない傾向にあった韓国は471分(7時間51分)で日本を上回り、全体の32位。最長は南アフリカの553分(9時間13分)だった。

 「日本は眠りの少ない国」という認識が定着している中、「睡眠カフェ」は今年6月30日から営業を始め、12月31日まで運営される。ターミナル駅にあるボックス型のシェアオフィスとして、室内にはリクライニング・チェアとカプセル式のコーヒーメーカーを設置。遮音性の高い個室ブース内で人目を気にせず仕事に集中し、また、休養するスペースとなっている。営業時間は全日午前10時から午後8時45分で、利用料金は15分単位で330円。交通系ICカードでの決済による一般利用が可能だという。

 ネスレ日本の担当者は「ビジネスパーソンやリモートワーカーの利用を想定しております。効率的に仕事を行うためには適度なリラックスタイムが必要だと思いますが、多忙な中でオンオフの切り替えがなかなかできていないという声があります。ワークブース内での過ごし方はお客様により異なると思いますが、『ネスカフェ』のコーヒーを手に仕事の合間のリラックスタイムを過ごしていただきたいと考えています」と説明した。

 JR東日本の担当者によると、「同時期から営業を開始した駅構内の他ブースと比較しても5倍以上の方に利用いただいており、想定を超える反響があります。ビジネスパーソンの多い平日だけでなく、土日も含めて非常に多く利用いただいています」という。

 コロナ禍となった2020年以降、日本社会ではテレワークが求められ、徐々に浸透しつつあったが、「ウィズ・コロナ」で経済活動を優先する流れになった昨今は再び出社を求める企業が増えてきている。折衷案的に、在宅ワークをしつつ、週の約半分は出社する「ハイブリッド勤務者」が出てきている。

 味の素株式会社が今年1月に実施した調査によると、出社日数が少ない人よりも、週3、4日出社している人の方が「日中、眠気を感じる」とより多く回答している。同調査では、緊急事態宣言明けの昨年10月から今年1月にかけて「出社&リモートのハイブリッド勤務」が常態化し、「リモートワークの環境に慣れたことで、出社時に今まで以上に肉体的・精神的なストレス感じている」「出社の日は通勤による早起きや対人ストレス、家事育児時間の圧迫などにより疲労度が高い」と指摘した。

 つまり、夜の睡眠と昼間の仕事のリズムが不規則になり、睡眠に悩みを抱えたハイブリッド勤務者が増えているといえる。

 コーヒーの飲み分けを通じて新しい睡眠スタイルを提案する体験型カフェ「ネスカフェ 睡眠カフェ」を17年から展開してきたネスレ日本の担当者は「コーヒーに含まれるカフェインは、摂取してから約30分後に吸収され、シャキッとしていただけると言われています。コーヒーを上手に休息時間に取り入れ、このブース内だけでなく、日常生活でも効率的にリラックスタイムを取るきっかけになればと考えています」とアピールした。

 日本社会における睡眠不足は長年の課題。さらに、爆発的な感染拡大が深刻になってきた今夏のコロナ禍において、働き方の再検討と共に、仕事と休息の切り替えの場が求められている。

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