お笑いトリオ・インスタントジョンソンのじゃい(50)が、競馬の外れ馬券が経費として認められず、高額の払い戻しに税務署から多額の追徴課税を求められたとして、6月10日付で東京国税不服審判所に不服申し立てをした。じゃい側の弁護士は、外れ馬券を経費として認めるよう求めている。競馬ファンの耳目を集めた訴えの行方はどうなるのか。弁護士法人・天音総合法律事務所の正木絢生代表弁護士に聞いた。
じゃいは、自身のYouTubeチャンネルや、テレビ番組に出演し経緯を語った。2020年12月には、川崎競馬のトリプル馬単で6410万6465円を的中するなど、芸能界きっての馬券師としても知られている。2021年秋、税務署の職員が自宅を訪れ、通帳などを持っていき「マンションを買えるぐらいの請求が来た」と報告。追徴課税の金額については、2015年から2020年の5年分さかのぼって請求を受けたといい「数千万円です。年収以上、年収の倍以上」と明かした。
じゃいは、追徴課税を求められた理由について「外れ馬券が経費にならないということ。分かりやすく言えば、1億円を使って1億5000万円当たったら、1億5000万円に税金がかかるので、5000万円しか勝っていないのに、まるまる持って行かれるというような状態」と話している。
過去にも競馬の外れ馬券を経費として主張した裁判があり、正木氏は「その方は経費として認められた。経費として認められるかどうかは、馬券的中で得た収入が、雑所得か一時所得かで分かれる。雑所得として認められれば、経費として認められる。ただ、一般的には馬券での収入は一時所得になる。一時所得だと、経費として認められない」とした。
一番の争点は、じゃいの馬券的中による払い戻しが「雑所得」なのか「一時所得」にあたるのかという点だ。
雑所得か一時所得かは、どう分かれるのだろうか。正木氏は「ネット投票では証拠が残るという点に関しては、そもそも争点になっていません」と前置きした上で「競馬が趣味の範囲であれば一時所得。経費として認められた方は、趣味の範囲を超えて業務的であるというか…システム化して、ソフトウエアで機械的に全レースを買うという形を取っていたので、趣味の範囲を超えているとして雑所得になった」と説明する。
じゃいの主張は通るのか?正木氏は「じゃいさんは、あくまで趣味の範囲でやっているとみられたが、今回は金額が大きいのでどうなるか。金額が大きいという点が、判断基準の運用変更につながる可能性はゼロではないのかなとも思う。これぐらいの額になると、一時所得とは言えないのでは…という見方もできそう」との見解を示した。
競馬では馬券購入時、馬券の種類ごとに20~30%の控除率が設定され、いわゆる主催者の取り分となる。10%は国庫納付金として国の取り分となるため、じゃいは払戻金にも課税される「二重課税」の理不尽さを訴えている。
正木氏は「二重課税という考え方は、実際にその可能性を否定できないと思う。馬券の購入の方法もいろいろで、例えば多頭数のBOX買いとかで馬券を買って、1点だけが当たった場合、馬券購入の費用は100円だけなのか?という話。競馬ファンはずっと言っている点だと思う」と指摘した。
続けて「ここは本当に、国がどう考えているか。あくまで国が『雑所得じゃない』と言っているけど、理論的には、じゃいさんのその感覚はすごく自然なこと。私もそう思う」と話す。
じゃいは不服申し立てをした理由として、支払った税金を取り戻したいのではなく、制度のおかしさを問題提起するためとしている。正木氏は「今回のじゃいさんの訴えで、社会も注目する。おかしいという声が多く上がったら、国がどう判断するのかを注視したい」とした。