コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻で増える「悪夢障害」 対策は「意味を深追いしないこと」

深月 ユリア 深月 ユリア
画像はイメージです(assedesignen/stock.adobe.com)
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 コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻によって「悪夢障害」と称される現象が起きていると海外メディアで報じられた。ジャーナリストの深月ユリア氏がその現象についてまとめ、日本の専門家にも話を聞いた。

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 新型コロナウイルスやウクライナ戦争などネガティブなニュースが多い世の中で、気持ちの浮き沈みを感じる方もいらっしゃるだろう。そして、ネガティブなニュースは我々が見る夢にも影響を与える。

 2年前のニューヨークタイムズ紙(2020年4月13日付)によると、 「コロナウィルス・パンデミック・ドリーム」とも呼ばれる「悪夢障害」に悩む人々が増加した。 同紙によると、Google検索での「why am i having weird dreams lately(なぜ最近変な夢を見るのか)」という検索数が4倍になり、ツイッターでも悪夢に関する投稿が数多く報告されていたそうだ。

 ボストン大学医学部神経学の准教授、パトリック・マクナマラ氏のナショナルジオグラフィックなど海外メディアで回答したインタビューによると、コロナ禍の不安や人と会いにくくなった孤独感が影響しているという。

 「通常、人は朝目覚めると、夢を覚えていないことが多い」「コロナ禍での孤独感やストレス、運動不足による睡眠の質の低下が悪夢を誘発し、夢を覚えているケースが増えた要因だろう」

 実際に仏のリヨン神経科学研究センターの研究によると、コロナ禍で悪夢を見る人が通常より15%増え、夢を覚えている人が35%増えているそうだ。

 また、イタリア睡眠医学会の研究によると、イタリアのロックダウン中に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状と類似したような悪夢を見る人が増えたという。

 コロナ禍のみならず、ウクライナ戦争の惨事報道も視聴者のメンタルヘルスに影響を与える。

 「日本トラウマティック・ストレス学会」によると、過去にアメリカ同時多発テロやノルマンディ連続テロ事件、ボストンマラソン爆破事件の映像も一部の人々にとってPTSDの要因となっていたという。

 では、「悪夢障害」になった場合、どうすればよいのか?

 麻布メンタルクリニックの臨床心理士・公認心理師で、漫画「サイコドクター」のモデルにもなった黒岩貴氏によると、「悪夢の意味を深追いしないこと」が重要だという。

 「夢はそのままの形では見ないで象徴的に現れるものにすぎません。 追いかけられる夢は精神的な圧迫がある時の現れですし、 人を殺してしまった夢などは、今から脱皮し次の新しい方向へ行きたいという現れと取れます。また、夢は共通無意識の現れもあります。悪夢は実社会で嫌なことがあった時に流すための練習と捉えてみることもできます」(黒岩氏)

 それでも、悪夢が気になる場合はどうすればよいのか。

 ハーバード大学の心理学の助教授で「パンデミック・ドリーム」 「トラウマと夢」の著者であるディアドラ・バレット氏によると、「寝る前に夢のシナリオを作る」「イメージリハーサル療法」という方法で見たい夢が見れる確率が50%上がるそうだ。

 方法は、頻繁に見ている悪夢の内容を文章に書き出して、さらに自分で望む結末を書き足す。

 例えば、殺人鬼に追いかけられている悪夢を連日見ている人は、殺人鬼をウサギや猫など自分が好きな無害な動物に書き換えていく。地下室に閉じ込められている夢なら、窓を空けて羽を生やして自由に飛び立ち、自分自身の意識で「夢のシナリオを作る」。

 「夢のシナリオ」が想像できない場合は、寝る時に見たい夢に関連したもの(好きな人の写真、趣味やお気に入りの小物など)を置いて、寝る直前にそれらを眺めながら消灯する。夢は無意識の現れであり、己が創る精神世界でもあるので、ぜひシナリオをつくって「夢の創造主」になってみよう。

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