たびたび抜かれる波平さん像の〝毛〟問題 被害届を出さないのはなぜ?商店街に聞いた 

杉田 康人 杉田 康人
桜新町商店街にある波平さんらの銅像
桜新町商店街にある波平さんらの銅像

 東京都世田谷区桜新町の「サザエさん」一家銅像から〝髪の毛〟が抜かれ、8日までに修復された。銅像がある桜新町商店街は理事会を開き対応を協議するが、警察に被害届を出す意向はないという。波平さんの銅像から毛が抜かれたのは6度目。なぜ被害届を出さないのか?同商店街に話を聞いた。

 商店街によると、3日朝に波平さんのトレードマークになっている1本毛や、ワカメちゃんのおかっぱ頭から跳ね出した3本の〝アホ毛〟が無くなっているのが見つかった。同商店街の依頼を受けた業者が、ビニールでコーティングされた針金で〝スピード植毛〟した。

 修理費用について、商店街の担当者は「金額は言えませんが、ツイッターで『ざっくり東京から新幹線で浜松に行けるくらいの費用』とつぶやきました。いつまでも髪の毛がないというわけにもいかず、商店街の会費から出すことになります。」と話し、数千円規模とした。ワカメちゃんの髪の毛が抜かれるのは初だという。

 2012年の銅像建立以来、繰り返される蛮行。同商店街にはSNSなどを通じて「防犯カメラをつけないのか」などの意見が寄せられている。担当者は「商店街にある18台の防犯カメラのうち、1台の画角に波平さん像がぎりぎり入っているのですが、やった人を特定できるまでには…」と明かす。銅像をガードする本格的な防犯カメラ設置は「景観も変わってくる。それに公道なので、現実的ではない」とした。

 商店街は理事会を開き波平さんの〝抜け毛対策〟を協議するが、警察ざたにはしたくないという。サザエさん一家は桜新町に住んでいる設定で、商店街は作者・長谷川町子氏の美術館、記念館のおひざ元だ。担当者は「ほのぼのしたサザエさんの世界を大事にしたい」と、被害届を出さない理由を説明。たまに登場する泥棒以外、悪人が出てこない国民的アニメの世界観を強く反映している。

 にぎやかな桜新町商店街。波平さん像の毛をさわったり、スマホのカメラを向ける人が絶えなかった。「酔っぱらっちゃって強く引っ張ったのが原因だと思いますが…。『なぜ波平さんの髪の毛がなぜ抜かれるのか?』と聞かれると、人がいっぱい来るからなんです」(担当者)。何度も憂き目に遭いながらも、銅像のてっぺんに貴重な1本毛は生え続ける。

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