「山下達郎風」歌声で「宝くじに当たった」ポセイドン・石川 次はアーティストで飛躍狙う

山本 鋼平 山本 鋼平
ポセイドン・石川
ポセイドン・石川

 「山下達郎風」の歌声で注目を集めた〝シティポップ芸人〟ポセイドン・石川さん(39)は今、新ネタならぬ、ミュージシャンとしての代表曲を目指している。5月25日に配信リリースされたシングル、近視のサエ子「女、深夜の麺屋にて」では作曲、コーラスを担当。自身のレーベルPoseidon recordsから初の楽曲提供を果たした。「知名度のある方に楽曲を提供して、自分のライブでもその曲を歌えるような活動が展開できるようになった時に、ようやく自分をアーティストと呼んでいいのかな」と未来図を描いた。

 多重録音で構築され、山下達郎さんをほうふつさせる分厚いコーラスが「女、深夜の麺屋にて」の楽曲を支える。サエ子さんによる情感豊かな世界観と歌声を、シティポップアレンジで彩った。「メジャーデビューしてから敬愛する〝あの方〟のモノマネというかジェネリック版をやらせていただきましたが、それは宝くじに当たったようなもの。曲を書き、絵を描くことを地元の石川でずっとやっていたので、本当にやりたいことは制作でした。ようやく一周まわって自分でお仕事を選ばせていただく状況になりました」。新たな挑戦に充実感を漂わせた。

 石川・金沢市出身のポセイドンさんは、高校時代からジャズピアノに取り組み、大学では日本画を学んだ。音楽と絵画を並行させ、大学卒業後は京都に移ったが、やがて音楽に専念。ポセイドンは先輩からのあだ名で、石川は出身地と日本画の恩師・石川義から芸名にした。2017年に発表したインディーズアルバム「TOKYO SHOWER」で、友人に勧められ敬愛するようになった達郎さん風に歌った1曲が最も評判が良く、節回しやニット帽などの衣装も寄せるようになった。18年8月、DA PUMP「U.S.A」の楽曲を自らアレンジし、達郎さん風に歌う動画が、ユーチューブで150万回以上再生され話題に。同年11月にメジャーデビューを果たした。

 豊富な音楽知識とコーラス、〝達郎さん愛〟に裏打ちされたシティポップアレンジを駆使した、XJAPAN「紅」、きゃりーぱみゅぱみゅ「にんじゃりばんばん」、大塚愛「さくらんぼ」など〝達郎さんが絶対カバーしなさそうな楽曲〟の動画でも注目を集めた。モノマネ番組などバラエティーを中心に、テレビ番組に度々登場するようになった。

 「何の番組に出ていたかも全然覚えておらず、頭の中から記憶が抜けている期間があります。車移動が多く、東京から仙台、岡山も当たり前でした。音楽にのめり込むよりも移動に時間をかけることに矛盾を感じていて。表舞台に立つのはすごいことですが、自分には興味がなかったですね」と多忙時期を振り返り、「契約期間は2年だったので、2年たったら自分の好きなようにやらせて欲しいと伝えました。宝くじに当たったようなもので、やってる時から長く続くとは思わなかったし、一周まわったらどうしようかと考えていました」と、〝一発屋〟を自覚していた。

 ある競馬番組の馬券購入企画で負けが重なり、最終レースで達郎さんの名曲と同じ馬名に投票し、負けを取り返した。絶不調時に表情をなくし、ふさぎ込んだ。「一番やっちゃいけないことなのに…その時に自分は向いていないと分かりました」と苦笑い。それが芸人に見切りを付けた瞬間だった。

 契約を終了後、ユーチューブ動画を企画制作する事務所に移り、達郎さん風に歌うものなど音楽を軸にした動画投稿を続けた。シティポップアレンジと多重録音のコーラスは評価が高く、ライブ活動も行っていた。しかし、物足りなかった。

 「自分がメジャーに入れたのは『U.S.A』のカバーで、メジャーで出したアルバムも基本カバーありきのもの。それは正直コンプレックスでした。達郎さんのファンの方が多く応援してくださり、達郎さんの楽曲のカバーを求められる。喜んでくださるのは嬉しいんですけど、自分がポセイドン石川として評価されるには、自分の曲を歌わないと、ミュージシャンとして成長も評価もない。知名度のある方に楽曲を提供して、自分のライブでもその曲を歌えるような活動が展開できるようになった時に、ようやく自分をアーティストと呼んでいいのかな」

 動画配信をしばらく休止し、作曲活動に励む日々。「コンペに出す楽曲をたくさん作っています。狭き門で採用されるのは難しいのですが、より作曲に力を注ぎたい」と、晴れ晴れとした表情で語ったポセイドンさん。達朗さんとの面識はないが「ライブで達郎さんがMCのネタで僕のことを『そんな似てないと思うんですけど…』と喋っていただいたり、竹内まりやさんが娘さんと一緒に僕の動画を見て大笑いした、と人づてに聞きました」と、うれしそうに、そして少し誇らしげに語った。

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