「地球の生命起源は宇宙に由来」の可能性広がる 隕石の分析から生物学的に重要な要素含有

深月 ユリア 深月 ユリア
 ※イメージ図
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 地球における生命の起源が宇宙に由来するという説がある。隕石(いんせき)を分析すると、その要素が含まれていたというのだ。女優でジャーナリストの深月ユリア氏が、研究者たちの見解をまとめた。

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 地球の生命の起源が、地球に落下した隕石などの中に含有される他の天体の微生物が進化したものだという「パンスペルミア説」をご存知だろうか。「パンスペルミア」とは、ギリシャ語で「さまざまな種の寄せ集め」という意味がある。

 パンスペルミア説に対して、「宇宙線を浴びると微生物は死滅するのでは」という批判もあったが、科学誌ネイチャーやサイエンスに「隕石に含有されれば宇宙線の影響は小さくなる」「大気圏突入の過熱や衝撃に耐えうる」とする論文などが複数発表されている。これまで研究者たちが多く隕石を研究・分析したところ、実際に生命を構成する要素となる有機物が含有されるケースがあった。

 例えば、1969年にオーストラリアに落下した「マーチソン隕石」を調査したところ、アミノ酸などの有機分子が確認された。86年に探査されたハレー彗星の核には大量の有機物が含有されていることが判明した。

 2014年に小惑星探査機「はやぶさ2」が探査した地球近傍小惑星「リュウグウ」の表面の岩石の中に多くの有機物のみならず、水のような液体も確認された。有機物の炭素と水は、まさに生命を形成する基本的な要素である。19年11月、東北大学理学研究科の古川善博准教授は隕石の中に糖分子を初めて検出し、生体材料を生成することができることを示唆し、パンスペルミアの仮説も支持した。

 そして、北海道大学の 大場康弘准教授らによる研究グループが「Nature Communications」(4月26日付)に発表した論文によると、世界各地に落下した3種類の隕石を調査したところ、なんと、いずれにも 生物の遺伝子情報を記録する生体分子「核酸塩基」が含有されていたという。研究内容は1950年にカナダに落下したタギシュ・レイク隕石、同年に米国に落下したマレー隕石、そして、69年、オーストラリアに落下したマーチソン隕石からサンプルを採取し分析したものだ。

 大場准教授は今回の発見について次のように語る。

 「今回の研究で、生物学的に重要な分子が炭素質隕石から検出されました。これは生命が誕生する前に、それらが地球にもたらされていたということです。分子による遺伝的機能の発生と生命の誕生において、何らかの役割を果たした可能性があります」

 昨今、白熱するパンスペルミア説だが、我が国でも多くの研究者たちが注目している。

 15年5月より、日本の東京薬科大学の山岸明彦氏らのチームによる「たんぽぽ計画」では、国際宇宙ステーション (ISS) のきぼう実験棟の船外の宇宙空間を漂う微小な隕石や粒子を捕集して、生命の材料になるような有機化合物が含まれるか、微生物が惑星間の移動に耐えられるか、という実験が行われていて、今後の研究結果に期待が寄せられる。

 やはり、地球の生命の起源は宇宙の他惑星にあるのか。我々人類が誕生した謎も明らかになる日は近いのもしれない。

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