怖い話にワクワクな「女子会」の夜 オバケが出なくてもOK、多様化する「怪談」 アイドルが解説

北村 泰介 北村 泰介
巧みな語り口で「怖い話」を披露する怪談家「ぁみ」(右から2人目)。ちゃんもも◎(右)ら女性陣も聞き入った=都内
巧みな語り口で「怖い話」を披露する怪談家「ぁみ」(右から2人目)。ちゃんもも◎(右)ら女性陣も聞き入った=都内

 「怖い話」を聞きたくなることがある。非日常の世界に震え、日常に戻ってホッとしながら自分の足元を確認する。そんな緊張と緩和が交差する「精神の揺れ」が「怪談」には求められているのだろうか。東京・渋谷のライブハウスで3月半ばに開催された「渋谷怪談女子夜会」と題するイベントには、アイドルグループやガールズバンドのメンバー、編集者、ライターといった多様なジャンルで活躍する女性たちが参加し、それぞれの「怪談」を語った。(文中敬称略)

 怪談家の「ぁみ」が2014年から毎年開催しているイベント「渋谷怪談夜会」のスピンオフ企画。同会に出演してきたアイドルグループ「バンドじゃないもん! MAXX NAKAYOSHI」のメンバーでタレント、作家の「ちゃんもも◎」が呼びかけ、ゲスト6人を交えた〝女子会〟スタイルとして初開催した。

 参加者は、ちゃんもも◎と同グループの甘夏ゆず、ガールズバンド「SILENT SIREN」の山内あいな、アイドルグループ「ARCANA PROJECT」の桜野羽咲、インスタグラマー・つぐみるん、ウェブニュースサイト「トカナ」元編集長の角由紀子、実話怪談ライターの大谷雪菜。ぁみ&ちゃんもも◎のMCでそれぞれの「怖い話」を披露し、満員の観客が聞き入った。

 文字に起こすと、それほど怖いとは思わない話でも、その語り口と間(ま)によって場の空気は「怖さ」に支配される。参加者唯一の男性で、お笑いコンビ「ありがとう」のメンバーでもある「ぁみ」の語りはプロの芸人だけに絶妙だった。一方、女性たちは怪談の形式にはこだわらず、自身が感じた「怖い話」を繰り広げた。

 ちゃんもも◎は「最近聞いたリアルな話」として、「男性が引っ越したマンションの角部屋前に、最初はゴミ、翌日はアイスの棒、次の日は落ち葉、その後は革靴が置かれるという日が続き、ついには扉を開けるとテーブレコーダーがドアノブにかけてあった。このテープを聞いたらヤバい、死に巻き込まれるという直感で、聞かずに処分して引っ越した。何があったというわけではないのですが、自分の危機管理能力を信じてヤバそうなものには触れないで生きていって欲しいという話でした」と怖い現象に直面した際の心構えを説いた。これもまた怪談の新しいスタイルか?

 角は深夜3時の取材先で録音した「おーい」という苦しそうな声と1回だけチリンと鳴った固定電話の音を披露。リアルな音響で会場に寒気が走った。メンバーの1人が「(音声を)流す直前に『ごめんなさい』という声も聞こえた!」と怖さに震えながら指摘したところ、少し間を置いて、会場のスタッフが「(音声が流れるまで)『お待ちください』と言いました」と自身の肉声だったことを明かし、会場は大爆笑。怖さによって増幅された誤解(幻聴)が、笑いに転じる珍場面だった。

 ちゃんもも◎は「都内の有名心霊スポット」として知られる霊園を深夜歩いた映像を公開。「松ぼっくり背中をかすめるように落ちてきたんですが、そこに木はなかった。『この先、行くなよ』というお知らせだったのか?」と振り返ると、角は「その霊園に夜中の2時に取材で編集部員と歩いていたら、ラジオで野球の実況中継を聞いているオジさんが座っていて、あれ?こんな時間に野球中継?と思ってすぐ引き返したら、いなくなっていた」とネタをかぶせて盛り上げた。

 終演後、ちゃんもも◎はよろず~ニュースの取材に対し、「このメンバーだと楽しいだろうなという人との『お泊まり会の夜』がコンセプト。みんなが持ち寄ったネタを想像しながら話すと、怖いだけでなく、ドキドキして面白い。怖いはずなのになぜかワクワクしてしまうことが好きなので、女子会の要素をミックスしました。怪談には器の広さがあって、オバケが出てこなきゃいけないわけでも、人を脅かさなきゃいけないわけでもない。いろんな要素を詰め込んで、お客さんも一緒に笑ってアットホームな空気を感じてもらい、みんな友だちになった気持ちで帰ってもらえるライブになったかなと思います」と手応えをつかんだ。

 出身地の箱根で幼い頃からUFOや河童(かっぱ)を目撃してきたという、ちゃんもも◎。「アイドルとして心霊スポットのロケをやったり活動の幅を広げたい。小さい頃からオカルトマニアなので、オカルト好きとして、いろんなお仕事に呼ばれるように、頑張って何でもやります。怪談女子会も第2回を間が開かないうちに開催できれば」と意欲的だった。

 「怪談」のキモは「怖さの共有」だが、時には笑いが生まれることもある。怖さ一辺倒ではなく、そんな引き出しの多さを楽しむ世界観もありなのだと感じた。

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