コロナ禍の日常となったマスク着用の生活だが、激しい運動による息づかいの変化、人との接触を余儀なくされるスポーツの分野ではどのような対策が取られているのだろうか。学校の部活動に焦点を当て、飛沫対策として「頭部接触」の頻度によって2種類に分けたマスク「フェイスカバー」を開発したメーカーの担当者に話を聞いた。
学校用水着開発の大手「フットマーク」(本社・東京)は、「部活動フェイスカバー」を「一般スポーツ用」と「接触系スポーツ用」に分けて3月30日に発売した。部活動に関わる人々の要望を受けた提案商品だという。一般スポーツ用(税込小売希望価格1320円)はフェイスカバー下側のボタンを外して開閉することで呼吸がしやすくなり、スポーツ全般に使用できる。接触系スポーツ用(同1650円)は、つぶれても復元しやすいドーム形状で、ラグビーや柔道など接触の多いスポーツでの使用が可能。いずれも色はグレーで、同社直営ネットショップなど販売している。
同社の担当者は「日常の部活動や各競技大会の会場では、練習、移動やアップ時などはマスクを装着し、飛沫対策をされています。一方で、すべてのチームや学校ではありませんが、試合になるとマスクを外して試合に臨まれている現状もあります。マスクをした試合中では、激しい動きの中でマスクがズレてしまい、鼻が出てしまっている状態も目にします」と現場の実情を解説した。
その上で、担当者は「水着素材を耳の部分に使用し、長時間付けても耳が痛くならず、フィット感のあるフェイスカバーにしました。一般スポーツ用はあご部分のボタンを外して開閉することで、激しい運動の際には空気の通り道を確保。選手が集まる場面ではボタンを止めることでマスク型になり、飛沫拡散を抑えます。接触系スポーツ用は頭部に回すタイプのベルトを採用し、アジャスターでサイズ調整ができるようにしました。メッシュ素材を採用し、裏面には熱い息のこもりもなく呼吸が楽になります」と説明した。
では、この両タイプについて、具体的な対象競技や、その線引きはどうなっているのだろうか。
担当者は「一般スポーツ用は陸上スポーツ向けに開発し、体の接触がある競技を含め、頭部接触が比較的少ない競技を想定しています。野球、ソフトボール、サッカー、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、テニス、卓球などです。一方、水泳、水球など水上、水中競技は水に対する安全性確保できませんので対象としていません。ちなみにプール用マスクは別途開発しており、待ち時間や移動時間で装着するもので泳ぐときは首元まで下げ、外した状態で使用していただくものです。接触系スポーツ用は頭部接触の頻度が高いと考えられる競技をイメージしています。柔道、レスリング、ラグビーなどです。ただ、剣道、フェンシング、アメリカンフットボールなど顔面を含む頭部に防具を装着する競技には対応していません。頭部に防具を装着する競技には剣道稽古用マスクをおすすめしています」と例外のケースも含めて分類した。
では、一般スポーツ用でボタンを外すタイミングはどうなるのだろうか。
担当者は「競技特性にもよりますが、場面、場面で開閉調節できる機能が特徴となりますので、個人の状況判断によるとも思います。競技中は空気の取り込みを容易にするために空けて、タイム中や休み中は閉じるとよいかと思いますし、また、その逆も考えられると思います。その部分では個人の状況判断ではないかと思います」と補足。接触系については「着用したままで呼吸が楽な状態を維持します。『形状が元に戻る』ということは、こしのある素材とドーム型形状により復元が容易で、安定した空間確保がより呼吸をスムーズにできることにつながります」と付け加えた。
同社の担当者は「3年間通う中学、高校ですが、こと部活動をみると、実質活動期間は2年強です。それがコロナ禍によりさらに練習ができない、大会に参加できない、大会中止になってしまうことなどはとても残念なことだなと思います。そのような中、日々の選手皆さんの努力に少しでも協力したい、お役に立ちたいという思いで開発しました」と明かし、「両タイプのフェイスカバーがより競技向けによいのかも含め、検討の余地はあると考えます。今後さらにさまざまな声を聞いていきたいと思います」と模索している。
コロナ禍におけるスポーツ現場で使用するマスクの進化はまだ発展途上。さらに開発は進められていく。