1993年に登場した名作格闘ゲーム「餓狼伝説SPECIAL(ガロスペ)」に特化したゲームセンター、名古屋ガロスペスタジアム(愛知県名古屋市中区)が2月、開業3周年を迎えた。店長で全国屈指のクラウザー使いでもあるシュラガユクさん(43)は「ガロスペの収入がガロスペ環境の維持向上に充てられていることがうれしい。ガロスペのSDGsのようです」と手応えを口にした。
大須商店街の雑居ビル2階、20平方メートル弱の一室。対戦台が2セット、CPU戦用の 2台、計6筐体が稼働する。水曜、金曜の夜、土曜は夕方から営業。入場料400円で対戦台は100円2クレジット、単独台は100円3クレジット。93年から腕を磨き続ける猛者、復帰組、活動歴数年の若手が熱い空間を作り上げる。「経営はぼちぼちです。コアな層が相手なので、コロナ禍でも随分助けてもらいました」と語った。
2018年7月、大須商店街にあった大型ゲームセンターの経営方針が変わり、ガロスペ対戦台が姿を消した。名古屋には50人弱のガロスペ愛好家がおり、「名古屋餓狼会(名狼会)」が形成されるほどだったが、その拠点が消滅した。「ガロスペが好きなのと、コミュニティーを守りたい気持ちが大きかったですね。東京や関西に比べてゲームセンターが少ないので、ガロスペ設置を他店にお願いするよりも自分でつくった方がいいと思いました」。開店準備に取りかかった。
「そんなニッチな店は無理」という否定的な声は耳に入ったが、勝算はあった。ガロスペはコンティニューごとに点数が一つずつ加算されるシステムで、対戦台のインカム(コイン投入数)は画面の点数表示からおおよそが予測できた。「収入は分かったので、あとは引き算でした。大須商店街に近い、対戦台が2セット置ける広さ、家賃が安い、この3つを満たす場所がここでした。当時のゲームセンターの、ガロスペがあったスペースだけを切りとったイメージです」。立ち上げから半年で開店。「風営法の許可が下りたこと、大家さんに理解いただけたことが大きかった。今思えば順調だったように思いますが、当時は半年もガロスペの場所がなかったので、本当に長く感じましたね」と振り返った。
19年2月のオープン後は全国からガロスペファンが駆けつけ、海外観光客の来店も多く、ガロスペを通じて友人になったフィンランド人が来日したこともあった。「あの頃は勢いがありました。ゲームに国境はないと思いましたね」。そして20年春、コロナ禍に直面した。
第1波の際は休業要請だったため行政から補償に充てる協力金があった。第2波以降は休業のお願いに変わり、補償はゼロ。それでも生き残った。「スペースも家賃も最小限にとどめていたこと、名狼会のメンバーが、人数は限られても店に来てくれて、プレーを続けてくれたことで、何とか乗り越えられました。常連さんのおかげです」。ガロスペ愛の絆が身に染みた。ニッチでミニマムな経営が奏功した。
ゲーム基板や筐体画面が壊れやすいことなど、想定外のこともあったが、他にも仕事を持ちながら、営業4年目に臨む。県外からの遠征自粛を要請するなど、コロナ禍と折り合いを付けながら、ガロスペ愛を貫いている。「ガロスペの看板を掲げたので、その名前を汚さないで続けられていることが一番良かった。今もガロスペ話でワイワイ盛り上がれることが楽しいです。そして、ここの一番の強みは必ず対戦相手がいることです。もし、他にお客さんがいなかったら、私が相手をしますから。全キャラを動かせますよ」と笑った。
東京のゲームセンター「ミカド」が主催する「ガロスペ世界大会」では名狼会の会長・公明さんが15年から3連覇を達成。その一大勢力は今も健在だ。93年当時からのガロスペの情勢変化を質問すると「強キャラではなかった十兵衛、クラウザー、ジョーの評価が伸びています。強キャラの代表格だった舞は少しだけ落ちましたね」と語った。
最近はガロスペ初心者を鍛え上げる「ナガスタファイトクラブ」や初中級者向けの大会など、新たな企画も進行中。「ガロスペの収入がガロスペ環境の維持向上に充てられていることがうれしい。ガロスペのSDGsのようです。3周年は喜ばしいことですが、まだまだだと思っています。10年先までガロスペの対戦環境を安定存続させるのが目標です」。シュラガユク店長は力強く誓った。
YouTubeチャンネル「名古屋ガロスペスタジアム」はコチラ