スターリンによるウクライナの「人工飢饉」繰り返されるジェノサイド、占領で「ロシア化」進行? 

深月 ユリア 深月 ユリア
ロシアがウクライナに侵攻(Negro Elkha/stock.adobe.com)
ロシアがウクライナに侵攻(Negro Elkha/stock.adobe.com)

 歴史は繰り返されるのか。ロシアのウクライナ侵攻が深刻な事態になっている。果たして、停戦は実現するのか、泥沼化の一途をたどるのか?今後の行方が懸念される中、ジャーナリストの深月ユリア氏は、ソ連のスターリン時代から続くウクライナへの「ジェノサイドの歴史」をたどった。

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 2月24日、ロシアがウクライナに侵攻し、現在も戦闘が続いている。ロシアとウクライナの軍事力の差は月とスッポンほどあり、米軍もNATOもウクライナ支援の軍隊を派遣しなかったため、各国世論、メディアから「キエフはすぐに陥落する」という見解が多かったが、ウクライナは善戦している。かつて、ウクライナはソ連の支配下でジェノサイドされた歴史があり、親ロシア派のウクライナ人以外は何が何でもロシアの支配下に入りたくないのだ。

 1932年から33年にかけて、ソ連の独裁者スターリンはウクライナで「ホロドモール」といわれる人為的な大飢饉(ききん)を引き起こした。

 ソ連では1926年頃から農作物が不足し、当時「ヨーロッパのパンかご」と呼ばれるほどの豊かな穀倉地帯だったウクライナはスターリン政権の政策に都合よく利用されてしまった。ソ連はウクライナの農業の集団化(コルホーズ)を進め、農家で収穫された穀物のほとんどが徴収され、国外に輸出されたため、ウクライナ地域の国内に流通させる農作物が足りなくなってしまった。

 さらに、スターリン政権はウクライナ地域に共産党メンバーを送り込み、ウクライナ農民を徹底的に監視し、穂を刈るだけでも「人民の財産を収奪した」という罪状で10年の刑、「飢え」という言葉の使用も禁止された。食べ物がなくなった人々は死体を食べるようになり、チフスなどの疫病もまん延した。ホロドモールによってウクライナでは人口の20%が餓死し、正確な犠牲者数は記録されてないものの、400万から1450万人以上が亡くなったと言われている。

 多くのウクライナ人は再びロシアの占領下に入ると、「人工飢饉」はなくともジェノサイドの歴史が繰り返されるのではないか、と恐れている。

 ウクライナ人の国際政治学者アンドリー・グレンコ氏は 「今回、ウクライナが占領された場合、プーチンに反対する人間は粛清されるでしょう。ロシアでも反プーチンデモに参加する人が粛清・投獄されていますが、ロシア国内よりさらに厳しい統制が行われるでしょう。おそらくスターリン政権ほどではなくても、何千人の犠牲者が出ると思います。そして、公教育でウクライナ語を使用禁止してロシア語を義務化したり、ウクライナ正教会を禁止してロシア正教会への加入を義務付けたり、ウクライナ人のアイデンティティーを奪う『ロシア化』政策が行われるでしょう。実際、ベラルーシでも『ロシア化』政策が行われました」と解説した。

 グレンコ氏によると、今後、ロシア軍はより多くの軍隊をウクライナに投入し、さらに戦火が拡大する可能性もあるという。ロシア国内の軍が少ないうちに、大規模なデモが起きてプーチン政権が転覆することを期待する見方もあるが…。とにかく、ウクライナのジェノサイドをもう二度と繰り返してはならない。

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