アニメ監督、アニメーター、漫画家として多くの作品に携わった安彦良和氏(74)の代表作の大規模展覧会「安彦良和/機動戦士ガンダム THE ORIGIN展」が、埼玉県所沢市の角川武蔵野ミュージアム3階EJアニメミュージアムで22日に開幕する。原画を中心にポスターイラストや単行本イラストなど500点以上を展示する。21日には内覧会が開かれた。
同展は1979年にテレビ放映された「機動戦士ガンダム」のメインスタッフを務めた安彦氏が、2001年7月から11年7月まで「ガンダムエース」(KADOKAWA)で連載した漫画「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」から構成。安彦氏は「僕の中で『ORIGIN』が古びることはありません。それは、僕にとって『ORIGIN』は四十年以上昔のオリジナルの『機動戦士ガンダム』そのものだからです」と述べ、アニメ制作当時の富野由悠季監督の力量、〝ファーストガンダム〟の偉大さを改めてコメントしている。入場すぐに同展のティザー動画がスクリーンに映され、「ガンダムエース」の表紙がズラリ。展示は次の7つのコーナーに分けられ、時系列を追いながら作品世界を楽しむことができる。
「始動編/激闘編」では、シャア・アズナブルのサイド7強襲とアムロ・レイがガンダムを操り、ホワイトベースの大気圏突破と導くまでのシーンが描かれた原画類を展示。安彦氏は「テレビシリーズの第1話は、20分ちょっとに信じられないくらいの情報量を入れているんです。あれは奇跡に近い構成じゃないかな。そんな富野演出にリスペクトしつつ、本当はこれぐらいの尺が欲しいよね、と、もう少し親切にやってみたんです」とコメントしている。
「ガルマ編/ランバ・ラル編」では、地球に降り立ったホワイトベースがガルマ・ザビやランバ・ラルとの死闘を繰り広げる中、アムロが戦士として成長していく姿が描かれた原画類を展示。安彦氏はアムロと母親カマリアの別れを「いちばん好きですね。すばらしい話だと思います」とコメントしている。
「過去編」では、ジオン独立戦争から10年前、ジオン・ズム・ダイクンの死、遺児であるキャスバルとアルテイシアの幼き日々、シャアとセイラに名を変える過程が描かれた原画類を展示。安彦氏は「この『過去編』で最も描かなければいけないな、と思ったのは、デギン・ザビは悪者だったのか、ジオン・ズム・ダイクンは絶対の存在だったのか、正しいジオにズムとは何か、ということです」と振り返っている。
「ジャブロー編/オデッサ編」ではランバ・ラルの妻クラウレ・ハモンの復讐、リュウ・ホセイやマチルダ・アジャンの死、カイ・シデンとミハル・ラトキエの出会いと別れを描く原画類を展示。安彦氏は富野監督版からオデッサの会戦とジャブロー攻防戦の順番を入れ替え、マ・クベの肩書を鉱山管理者から地球占領軍最高司令官に変更した理由をコメントしている。
「ララァ編/ソロモン編」ではララァとアムロにシャアの交錯、スレッガーやドズルの死が描かれた原画類を展示。立体の吹き出しが会場を装飾している。「テム・レイは、すばらしい道化をやってくれていますね。ガンダムという大した物を開発した親父が、父親としては全然偉大じゃない、というのが『機動戦士ガンダム』のすごいところ」と、階段から転落死したアムロの父に言及している。
「ひかる宇宙編/めぐりあい宇宙編」はア・バオア・クーでの激闘、アムロとシャアの最終決戦から終幕までの原画等が展示。最終回の原画が並ぶエリアでは劇場版アニメの主題歌、井上大輔「めぐりあい」が流されている。安彦氏はキシリアがギレンを殺した理由、シャアがキシリアを殺す視野の狭さ、セイラがア・バオア・クーで正体を名乗り出た理由をコメントしている。
「OTHER WORKS」はセイラやアムロたちの後日譚、デギンたちの若かりし日を描いた番外編の原画、OVAなどの関連作品、安彦氏の仕事場を再現したインテリアが展示されている。OVAについて「僕のマンガは結構動くなと。理に適っていたんだな、やはり僕はアニメーターなんだなと思いましたね」とコメントしている。
同展は3月21日まで。期間内には安彦氏が登壇するOVA上映イベント、同展オリジナルグッズの販売などが行われる。