「ドカベン」「野球狂の詩」「あぶさん」などの野球漫画で知られる漫画家・水島新司さん(享年82)が都内の病院で死去したことが17日、所属事務所から発表された。10日に肺炎で亡くなったという。草野球の強豪として知られた「たけし軍団」を通して接点のあった芸人・なべやかんが、水島氏との忘れられない思い出をつづった。
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漫画家の水島新司先生が亡くなられた。
私がたけし軍団に入り、軍団野球のため、神宮の草野球場に行くと、水島先生が野球をしていた。私はたまにしか軍団野球に行かなかったが、水島先生は必ずいるイメージだった。たけし軍団には、おぼっちゃまこと水島新太郎さんがいた。新太郎さんは水島先生のご子息である。私が軍団に入った時には軍団を離れていたが、所属が太田プロという事もあり、多くの番組で共演していた。
その中で強烈に脳裏に残っているのが、元旦にサマーランドから生放送される番組だ。飛び込み台にからタレントがプールに飛び降りるゲームがあったのだが、そこに登場したのが新太郎さんだ。飛び込み台に立った新太郎さんは「軍団のお兄さんたちに贈ります」と叫び、「あっ兄さん、あっ兄さん♪」と阿波踊りのような動きをしながら飛び降りたのだ。それを見た芸人全員が凍り付いた。軍団、ダチョウ倶楽部さん、松村さん等のベテランたちもいたのに、誰も突っ込めないくらい凍り付いたのだ。
後でダンカンさんが「酷かったな。でも、完全につまらない方に振り切れただろ。この酷さは忘れないぞ」と言っていた通り、新太郎さんは忘れて欲しいだろうが今でも忘れられない。さらに、この番組では別の事も起きた。当時大人気だったグレートチキンパワーズが挑戦する時、ダチョウさんが「気取った世界からこっちの汚れた世界に来い」と我々のいる側に来るよう叫んだのだ。しかし、その掛け声にグレチキは乗らなかった。この時がグレチキのターニングポイントだったと思う。もしこちらの世界に来ていたら、芸能界で潰される事無く今も残っていたかもしれない。
水島先生の話から脱線してしまったが、先生の話を思い出す度に、必ず自分はこの事を思い出してしまうのだ。
神宮の球場で、野球が下手な自分とキャッチボールしてくれた先生。こいつ下手だなと思っていただろうが、笑顔でキャッチボールをしてくれた。へなちょこボールを投げる度、「すみません」という私。「いいよ、いいよ」と球を投げ返してくれる先生。野球漫画界の神とのキャッチボールは夢心地なはず。でも、いつも神宮にいるので、当時はありがたみが薄れていた。今となってはみんなからうらやましがられるエピソードだと思う。野球下手な僕にも笑顔で接してくれた水島先生には大感謝だ。神宮の球場に行けば先生の幻が見える気もする。
先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。