架空請求への対処法、「無視」で済まない場合も…裁判手続きを悪用するケース増加

平松 まゆき 平松 まゆき
写真はイメージです(takasu/stock.adobe.com)
写真はイメージです(takasu/stock.adobe.com)

 まったく身に覚えのない業者から督促状が届くという「架空請求」の事例は後をたちません。実は私も受け取ったことがあります。そこには「裁判予告」などと明記されており、「ご自宅や勤務先に伺います」との脅し文句も書かれているため、受け取った人は恐怖を覚えるのではないかと思います。

 架空請求関連のご相談に対しては、「無視するのが一番」と回答することで、通常は終わります。そもそも架空請求はれっきとした詐欺行為ですから、詐欺集団が自らの犯罪を暴露するかのような裁判を起こしてくることは考えにくいものです。そのため、「裁判予告」レベルであれば、無視すればよいで終わります。

 しかし、最近は詐欺集団も手を変え品を変え、「裁判予告」レベルを超えて、実際に裁判手続きを悪用するケースも増えてきているようです。特に、まったく身に覚えのない「架空請求」ではなく、たとえば有料アダルトサイトなどを訪れた人に対する「登録料」(この場合は身に覚えはあるため「架空請求」と区別して「不当請求」と呼ぶことがあります。)名目で不当に高額な料金を、実際に裁判を起こして請求してくるケースを耳にします。

 皆さんはここで、「でも相手がやっていることは詐欺行為なんだから、黙っていても自分に有利な判決は出るはずだ」と思われるでしょう。

 しかしながら、裁判所としては、形式に不備がない訴状が提出されたら、まずは手続きに則って、被告とされた人に訴状を送るしかないのです。そのうえで、裁判所が公正な審理をするためには、双方の主張を聞く必要があるところ、被告側に無視されてしまうと、何が真実なのかの判断をすることができません。

 そのため、被告とされた人が裁判に参加しない場合、原告の請求の内容どおりの判決(欠席判決)が出てしまうのです。そして、いくら詐欺行為であったとしても、確定した判決を覆すことはそう簡単ではありません。

 このように、以前は「無視すれば良い」で片付けることができた架空・不当請求も高度化しているのが現状です。裁判所からの文書は無視することなく、速やかに弁護士などの専門家に相談してください。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース