「体温が1度下がると免疫が30%ダウン」の貼り紙は本当か?コロナ禍で気になる関係性 医師が解説

谷光 利昭 谷光 利昭
写真はイメージです(alphaspirit/stock.adobe.com)
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 あるユーザーから、スーパー銭湯で「体温が1度下がると免疫が30%落ちる」という主旨の貼り紙(ポスター)を見たけど本当ですか?という問い合わせが、よろず~ニュース編集部にありました。コロナ禍で、本格的な冬の到来が迫り、体温と免疫の話は気になるテーマです。兵庫県伊丹市の「たにみつ内科」で日々診察を続けている谷光利昭院長が解説します。

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 体温が1度下がると免疫力が30%も低下する。今回のような話を聞いたり、目にすることはよくあります。本当でしょうか?私が調べた限りではこの数字を裏付ける明らかな根拠はありません。しかしながら、体温が免疫に関わっていることは古くから知られていることです。人体実験はできませんが、トカゲを使った実験については生理学の教科書に記載があります。体温が高くなれば免疫能力が高くなり、発熱は感染に対する有効な免疫反応であるとされています。

 そもそも免疫とは何なのでしょうか?簡単に言うと我々自身にとって害となるものを排除することです。我々の身近なものでいうと、ウィルス、細菌、寄生虫などです。その免疫に関わっている臓器には、胸腺、骨髄、脾臓などがあります。その他には、全身にあるリンパ節(リンパ腺)です。

 リンパ節は全身のあらゆる場所にあります。風邪をひくと首のリンパ節がはれたり、耳の後ろのリンパ節が腫れたりします。手や腕のケガの場合には腋、足の場合には股の付け根のリンパ節が腫れることがあります。扁桃腺もリンパ装置のひとつです。人体で最大のリンパ節を有しているのは小腸です。小腸は栄養、水分を吸収するだけでなく、免疫にも重要な関与をしています。

 では、今我々がもっとも関心のあるウィルスに対して、どのように身体は戦っているのでしょうか?例外はありますが、細菌は細胞の外で増殖し、ウィルスは細胞の中で増殖します。細胞内に侵入してきたウィルスは、細胞によって守られているために直接攻撃することができません。

 そのためにウィルスに感染した細胞を同定して攻撃する細胞が出現してくれます。有名な細胞は、ナチュラルキラー細胞や細胞障害性T細胞になります。これらの細胞は身体の中に癌(がん)細胞ができたときにも攻撃して破壊してくれる有難い細胞です。これらの細胞は平熱よりも少し高い体温で、あるいは発熱している時により強く働くことも、さまざまな研究結果から分かって来ています。

 ただ、体温の上昇は免疫がすべてを決めるものではなく、あくまでも一要因にすぎません。無理をして熱いサウナやお風呂に長時間いることは極度の脱水になるなど体調の悪化に繋がることもあります。私はサウナや熱いお湯が苦手なので、適度に水分補給をしながら、自分にとって心地よい温度のお風呂に20分から30分間温もるようにしています。

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