どんな業界にもプロデューサーがいる。ラブホテルのプロデュースを専門に仕事をしている人に話を聞く機会があった。
そもそも、なぜ「ラブホテル」という呼ばれ方になったのか?ラブホテルの起源は、関西にあった『ホテルラブ』だった。円柱の回転看板に「ホテルラブ」と書かれていて、読み方によっては「ラブホテル」と読めるため、そこを利用するお客を乗せたタクシードライバーの間で「ラブホテル」と呼ばれ、それが全国に広がり、「ラブホテル」となったそうだ。
最初はこんな話をしていたが、いきなり「なべさんは、霊とかは好きで?」と聞かれた。なぜそんなことを聞くのかと質問すると「ラブホテルの霊現象って、すごく多くて」と真面目な顔で返された。
ラブホテルは4兆円産業と言われた時期もあり、ホテル数が多ければそれだけ部屋数も多くなる。そうなると死んでいる人も多いようだ。自殺、殺人、心中、死因は様々だが、霊が出る部屋は何組ものお客さんが同じような言い方でクレームをフロントに伝えて来る事が多く、必ず「部屋に誰かいる」と言ってくるそうだ。
あるホテルでは、女性が向き合った状態で、ベッドから顔を出している人と目が合ったという。別ホテルでは、あおむけに寝ていた女性が、天井を這(は)っている女性を見てしまったケースもあったという。
「全員がほぼ同じ事を言うらしく、ホテルオーナーも困ってしまい相談を受けるんです」
こういったトラブル相談にも親身になって答えるのがプロデューサーの仕事だ。
天井を這う女幽霊が現れる場所だが、昔ニュースになった中国人ホテトル嬢殺人事件の現場だった。2000年代に関東の某所で起きた事件だという。相談を受けたプロデューサーは、霊現象の話を聞き、天井に何か秘密があると考え、天井を調べるようにアドバイスした。
ホテルスタッフが天井を調べると、照明器具を持ち上げた天井裏に現金10万円、貴金属が多数あった。その部屋は殺されたホテトル嬢が使っていた部屋だった。不法滞在で家宅捜査をされる可能性や、タコ部屋状態で同居人が信用できない、そういった理由があったのかもしれないが、住まいに隠すのが危険と考え、もしもの時の為に大切な物を隠していたと思われる。
「あの場所に隠した物が心配だったのでしょう。だから確認の為に現れたと思うよ」
プロデューサーはそう予想した。その後、遺留品はお寺で引き取ってもらい供養したそうだ。
ラブホテルは「生」が誕生する場所でもある。「生」と「死」は表裏一体なので、霊が現れやすいのかもしれない。