ベテラン漫画家のエッセイマンガが注目を集めている。『かってにシロクマ』『コージ苑』『真・異種格闘大戦』、竹熊健太郎との合作『サルでも描けるまんが教室』などで知られる相原コージ(58)が今年3月、双葉社のwebアクションで『うつ病になってマンガが描けなくなりました』の連載を開始。コロナ禍の中で突然発症した病と向き合う日々を淡々と描いている。「完全に癒えた段階ではないので、リスキーな要素はあるのですが、相原さん自らが提案されたことでもあり、少なくとも〝マンガを描く〟という作家の本懐を考えれば、長年担当してきた私としては叶えてあげたい試みでした。『描くことで癒やしたい』という彼の前向きな姿勢に感銘を受けました」と、担当編集者の染谷誠氏は語った。
第1回目の配信は反響を呼び、抜群のPV(ページビュー)数を集めた。乾いた描写。太く硬い線。持ち味のギャグ要素を織り交ぜながら当時の状況を描くことで、笑いと恐怖が紙一重であることに気付かされる。相原氏は19年秋に右足を骨折し、完治後はぎっくり腰を発症。症状が治まった昨年春に、第1回目の緊急事態宣言に直面した。既に半年間外出がままならなかった中で、うつに襲われた。昨夏には同媒体で連載中だった作品を心身の不調で休止。心療内科への通院、入院を経て、昨年12月に退院。今年1月に今作の企画を提案し、担当医の了承を得て連載開始に至った。
染谷氏は「反響が大きいということもあり、それが励みとなったようです。現在は毎月の連載ページ数を徐々に増やしています」と現状を説明。「心と体を原稿用紙にぶつけている感じが担当として伝わってきます。でもあまり無理してしまうと、心身を壊してしまいますし、うまくバランスを保ちながら仕事をしてほしいですね」と思いやった。
長年担当を務めた相原氏の魅力を「ギャグ漫画家ですが、理性と理論でギャグを構築していくタイプ。とにかく真面目な方です。本能とノリでストーリーを作成するのではなく、あくまでも計算と理論と長年の経験則で本作に取り組んでいます」と語った染谷氏。作家の才能に加え、表現への業が色濃くにじむ注目作となっている。「無事作品完成。単行本化です。ヒット作となり、彼の努力が報われてほしいです」と期待を寄せていた。