「サクラ大戦」シリーズなどで知られるマルチクリエーター・広井王子氏(67)が総合演出する吉本興業発のレビューカンパニー「少女歌劇団ミモザーヌ」が、このほど初の有観客公演「Romance~恋するように」を東京、大阪で開催した。
少女歌劇団だけに、20歳になったら卒団となるミモザーヌ。12歳を最年少に、3期生までのメンバー27人が在籍している。東京・なかのZEROホールと大阪・東大阪文化創造館で行われた公演では、歌とダンスのレビューショウとして20曲を披露した。
アクロバットも飛び出した2時間の公演ラストでは、歌劇団のオリジナル曲「ミモザのように」をメンバー全員で熱唱。ホールの天井から、メンバーひとりひとり直筆のハート型メッセージカードが降ってくるサプライズで観客を楽しませた。
ミモザーヌは、2019年5月1日に結成。新型コロナウイルス感染拡大で有観客公演ができず、2020年12月30日の初公演はオンラインだった。大阪公演後、取材に応じたともだりのあ(13)は「最初は怖かったけど、お客さんを見たらみんな笑顔だった。みんなに元気を与えられたら…という舞台だったんですけど、踊っている私たちが元気をもらえた」と、観客を前にしての初ステージを喜んだ。
メンバーのいまもりまなか(18)は、阪神を応援するキッズダンサー「TORACOキッズ」出身。甲子園球場周辺で、スタンドに入る虎党を盛り上げていたという。「阪神ファンの前で踊っていた時は中学生。やらなきゃ、間違えないかなとずっと緊張していた。ミモザーヌは楽しんでもらいたいな、笑顔にしたいなという思いが強い。緊張せずにできているのかなと思います」と、ダンサーとしての成長を感じている。
コロナ禍で対面での稽古が制限され、リモートでのレッスンになった。いまもりは「対面でのレッスンが再開されなくて、このままやっていて意味があるのかな…と思うところまで追い込まれた。相談も他のメンバーから受けたし、精神的にしんどかった」と振り返る。ともだも「基礎練習、振り入れ(曲に合わせて振り付けをつけていく)もリモート。ずっとパニクってました」と、不安や戸惑いを感じていたという。
いつか舞台に立てる日が来ると信じ、メンバー27人がリモートを通じて励まし合った。広井氏はミーティングでメンバーに「何でもいいから質問をしなさい」などと常に呼びかけ、歌劇団内で何でも言える雰囲気を積極的につくっていった。
ともだは「広井さんはオーディションの時もサングラスをかけてスカジャンを着ていて、恐い人なのかなと思っていた」と笑う。広井氏はいつも優しく、ひとりひとりの意見をしっかり聞いてくれると2人は口をそろえた。
令和初日に結成したミモザーヌだが、公演は昭和のアイドルコンサートのような温かい雰囲気が漂っていた。舞台と客席の絆を創りたいと話す広井氏は「どこか懐かしい感じがするでしょ!?大人が見ると、キュンとするところがいっぱいある」と笑う。高校生以上のメンバーだけが出演する夜公演を行うプランもあり「どんな小さい場所でもいいので、いつもショーをやっているというのが大事なところ」と定期公演も視野に入れている。
12月には冬公演が予定され、20歳を迎えたメンバー・きくたまことの卒業舞台となる。いまもりは「メンバーが27人いるが、個性がみんなかぶらない。それぞれ色があって、きっと誰かしら〝推し〟を見つけられると思う」と自信を見せる。ともだは「ひとりひとり未熟なんですけど、公演ごとにどんどん成長していっている。楽しく見守っていただけたら」と公演に足を運んでほしいと呼びかけた。
歌劇団名の由来となったミモザの花言葉は「友情」や「感謝」。コロナ禍で友情を深めた27人の少女たちが、感謝の思いとともに舞台を踏んだ。