今年10月に発売25周年を迎えるポケモンカード(ポケカ)。シンプルながら戦略性の高いテキストやコレクション性を兼ね備えたイラストが評判を呼び、子供から大人まで楽しめるコンテンツとして成熟している。7日にはポケカを中心にした池袋初のTCG(トレーディングカードゲーム)カフェ&バー「ぱられる」がオープンした。
池袋駅西口の東京芸術劇場近くにあるビルのエレベーターが開くと、廊下に敷かれた芝生と大きなネオン看板が来る者を別世界に誘う。店内は水色を基調にしたかわいい雰囲気。ポケモンの世界観に彩られた店の店長を務めるのは、ポケカの開封動画をメーンに登録者数1万5600人を超えるYouTuber・ぱんなっこ(@TCG_Parallel)。普段は映像越しでの交流となるが、開店からは実店舗に立つ。
オープンのきっかけを、ぱんなっこは「YouTubeのコメントで『ポケカを始めたいけど相手がいない』という声が多くて、ポケモンカードに興味はあるけど、まだやっていない。一緒にやる相手がいないという人も、ここに来たら友達ができる。そんな場所にしたいと思いました」と説明。「池袋には、ポケモンセンターやたくさんのカードショップがあるので、いろんな場所を巡って、疲れたらゆっくり休んでもらえる場所になればうれしいです」と話した。
炎、草、悪などの多様なタイプを持ったポケモンたちと、戦いを有利に運ぶための助っ人カード「サポート」、ゲームにも登場するお助けアイテム「グッズ」などを組み合わせ、60枚のカードでデッキを作り、戦うポケカ。子供のころに遊んでいた大人たちが再び始める動きと、Switchで遊べる各種ゲームを窓口に手を伸ばした子供たちが合わさり、性別、年齢を問わず何世代にもわたって愛されるゲームとして競技人口を拡大している。現在は1~2カ月に1回発売される新弾が品薄状態となり、抽選販売制を採用する店舗も多い人気ぶりだ。
「ぱられる」の開店準備は4月から進めていたため、オープンがコロナ禍による緊急事態宣言と重なってしまうのは誤算だった。ぱんなっこ店長も「痛いところではありますけど…」と本音を吐露するが、感染防止対策には重点を置いている。アクリル板の設置やアルコール消毒の徹底に加え、店員は1時間に1回の検温を実施。二酸化炭素濃度計で密にならないよう管理されている。
ユーチューバー「ぱんなっこ」としての活動を始めたのは2020年4月。2018年7月に発売された500円で構築済みデッキが手に入る「GXスタートデッキ」からポケカを遊んでおり、もともとは自身が開封動画のファンだった。「周りの強い人に教えてもらいながら、どんどん楽しくなっていって、当時も今みたいにパックが品薄で買いづらかったので開封している動画をみるのが好きでした。最初は誰でも投稿できるんだからやってみよう、くらいの気持ちで始めて、月1、2回の更新。応援してくれる方のコメントが嬉しくて、本格的に投稿するようになったのは8月からでした」。
2020年7月23日の時点で登録者数は、まだ61人。8月から週3回に頻度を上げ、他のポケカユーチューバーとのコラボなど企画も本格化させると12月には1000人を突破した。今年の7月23日には1万5000人まで上昇。ポケカユーチューバー界では知る人ぞ知る存在だ。
「心がけているのは動画を出すときに『自分が楽しむ』ことと『マイナスなことは言わない』こと。いろんな方がポケカを好きだと思うんですが、みんなが嫌な気持ちにならないように気をつけています」とぱんなっこ。「私生活との両立が大変だった時期もありますし、今はブームでボックスが手に入らないのでカードショップの抽選応募フォームを探したり、予約情報があったら走っていったり、手に入れるのに苦労することもあります。いつ入荷されるかわからないので、コンビニやショッピングセンター、電気屋さんに寄ってから帰るのがルーティンです」という。
撮影や編集で10分間の動画にも平均4~5時間の作業が必要。テーマの「楽しむ」ができていなかった時期もあるというが、7月に愛知で開催された大型大会「PJCS」に出場した際には、小学生プレイヤーからサインを求められ、ファンの広がりを実感。だからこそ「ぱられる」にも家族で気軽に足を運べる空気感を大事にしたいと語る。「今、爆発的に人気になっているのは、小学生のときに遊んでいた方が大人になって戻ってきていることも大きいと思います。子供も大人も楽しめるシンプルなテキストが魅力。『ぱられる』には大会で活躍しているようなレンタルデッキも用意しているので、手ぶらでも楽しめますし、マッチングをするので1人で来ても大丈夫。コミュニティを作る場所にできたらと思っています」とアピールした。