30日に行われる東京五輪柔道男子100キロ超級で金メダル獲得が期待される原沢久喜の弟で、俳優の原沢侑高(ゆたか)が、よろず~ニュースのインタビューに応じ、兄へエールとともに、家族ならではの秘話、そして強さの秘けつを語った。
久喜には6月に会って激励したという侑高。「『兄弟として、ずっと引っかかるものがあって。どうしても不安なんですよ。いろんな兄貴を知っているからこそ、強い面も知ってれば弱い面も知ってるから」とし、「兄貴に電話して、兄貴の家に行って、真剣な気持ちで『兄貴は1人じゃないからね。みんないるよ、母ちゃんもいるし、応援してくれる人、みんないるから頑張ってね』と言いました」と明かした。久喜は戸惑いながらも「真剣な感じをわかってくれたんでしょうね。ちゃんと受け入れてくれました。それまで1人で全部背負ってる感があったんですけど、取っ払われたような気がしました」という。
リオ五輪の銀メダルは「あのときは、面白いくらい勢いがあったんですよ。兄貴も『勢いだけだった』って言ってました」と、現在とは状況が違う。それだけに「今回は、リオとは全然違うと言ってましたよ。リオは勢いだった、今回はいろいろ考えて、その上で集中して試合に挑むという感じだと」と、兄の心の内を語った。
原沢家は、久喜が小学生、侑高が幼稚園時代に両親が離婚。その後、母親が女手一つで、長女を含む3きょうだいを育てた。その環境が、久喜の「何でも1人で抱え込む性格」を形成したと侑高は語る。「決して裕福じゃないし、母子家庭だし、自然と兄貴が、親父の代わりとまでは言いませんけど、それに近かった。きょうだいみんな母ちゃんに負担掛けないようにしようと心の底では思ってて、それが兄貴は一番強かったと思うんです。今思うと、兄貴はわがままとかも言わないんですよ。長男だからというのあるんだろうなと。母ちゃんが兄貴に厳しかったのもあります。今でも『厳しくしすぎた』って言ってて」と、弟ならではの視点で話した。
多くは語らないが、誰よりも優しい兄の姿。メダリストになっても、性格的には一切変わっていないという。「調子に乗ってるところとか、見たことがないですね。兄貴は、メダルを1つも自分の手元に置いてないんです。全部高校に寄付してるんですよ。リオの銀メダルも。名誉とか名声、富に全然こだわらないです。本当に柔道を突き詰める人って感じ」と驚きの事実も明かした。
侑高が俳優になるために背中を押してくれたのも、久喜だった。「僕が俳優になることに、母ちゃんは大反対だったんですよ。で、僕はアルバイトで100万円ためて、それを母ちゃんに渡して、認めてもらった…と思ってて、今までそう話してたんです。でも最近聞いたら違ったみたいで、兄貴が大学4年のとき、母ちゃんが『侑高がこんなこと言ってるからやめさせてよ』と言ったらしいんです。そこで兄貴が、『いや、やらせたほうがいい。やらなくて後悔するくらいなら、絶対やらせた方がいい。やって現実見るならそれもいいし、成功するかもしれない。とりあえず挑戦させた方がいい』と言ってくれて、母ちゃんが認めてくれたってのが本当のところだった」という。
だからこそ、俳優を続ける侑高にとって、久喜は人生の師でもある。「常に兄貴の存在は僕の追い風。兄貴はいつも『最高の準備をすれば最高の結果が待ってる』って言うんですよ。俳優の世界もそうだなって。最高の準備をしていけば最高の結果出せる。「兄貴は俳優に例えると、カンヌとかアカデミー賞とか取ってレベルじゃないですか、そこを勝ち上がった人だから抽象的ではありますが、〝勝負師〟としての教えは学んでますね」と、やや照れくさそうに答えた。
弟として、ファンの1人として、久喜にかける期待はもちろん大きい。それでも「当然、金メダルをとってほしいんですけど、きれい事を言うと、兄貴が納得して帰ってきてほしいですよね」と話した。「リオが終わってから精神的に落ちたときがあるし、メンタルは強い方ではないと思うんですよ。だから、そこのケアをちゃんとできて帰ってきてくれたらうれしい、ケガもなく状態も良く挑んで、それで兄貴が納得して帰ってきてくれれば、僕はそれでいいと思っています」と家族としての表情を見せた後、「もちろん、金メダルを絶対取ってくれると信じてますけどね」と明るく笑った。