元アイドル寿司職人見習い 修業先探し苦戦 感じてしまう性別の“壁”

 アイドルグループ「幻.no」の元メンバーで、現在は寿司職人を目指して修業中のあこ63さんは、修行先の高級寿司店が営業を終了し、技術習得の場を失った。「女が寿司握るって、男よりプレミアつくからね」と言われた経験やコロナ禍の飲食店の現状など、修業先探しの難しさを語った。

 あこ63さんは2019年までアイドルとして活動した後、20年に寿司職人養成学校を卒業。今年1月ごろから西麻布の高級寿司店で一番弟子として修業をしていた。しかし、不況のため修業先が6月に営業終了。現在は次の修業先を探しているが、「こういう状況だから、『手伝わせてください』って言っても断られるんですよ。思っていたよりやりづらい」 と苦戦が続いている。

 約5カ月間勤めた西麻布の店にたどり着くまでには、「女性」という理由修業を断られたこともあった。初めはコロナ禍の不況を理由に不採用を告げられ「あまりお客さんも入っていなくてしょうがないな」と納得していたが、数カ月後、別の男性の弟子を取っていたことがわかったという。「豊洲に行ったらその大将とばったり会って、後ろに若い男の子がいて。大将が『やばいバレた』みたいな気まずい顔をしていて、その時に『これ多分女だからだな』って」と悔しさをにじませた。

 現在、修業を受け入れる声はかかるというが「『うちならすぐ握れるよ』って話をされた後に『女が寿司握るって、やっぱり男よりプレミアつくからね』とさらっと言われたり」と、性別を利用する提案をされることもあるという。「アイドルをやっているときに、事務所を抜けてセルフプロデュースで、女の子4人だけでやっていたんですけど、そのときに散々いろいろな大人を見てきて。今はそれの延長という感じ」。店探しではオーナーや大将の人柄を見るようにしているという。

 魚を触ったこともなかったあこ63さんが寿司職人を目指したのは、失恋と失職が重なり手元に100万円が残ったことがきっかけだった。アイドル活動を終えた後、新宿のバーで働き100万円を貯めながら、遠距離恋愛の交際相手が東京に戻ることを待っていた。だが、コロナ禍でバーの仕事を失い、交際相手とも破局。そんな時に友人から「『東京すしアカデミー』って、90万で寿司握れるらしいよ。寿司握れば?」と声をかけられた。「寿司って今まで自分の人生の選択肢の中に1回も出てこなくて。それは女性っていうのもあるし。その時に、雷に打たれたじゃないですけど、自分に全くない選択肢だったから面白いなって思った」と、寿司職人への道を選んだ。

 バーで働いた経験から「人と話すのがすごく好き」というあこ63さんは〝大将兼MC〟として客のトークをさばく、おいしく楽しい店を持つことを目標にしている。バーでは1人で来た客同士が交流し、店全体で会話が盛り上がる姿を見てきた。「みんなが食べて『これおいしいね』とか『口どけが良いね』と話したりするのがおいしさのプラス要素で、楽しかったなと帰っていく要素になるなと思って。みんなでフラットに話して、友達を増やしていける場所を作っていきたいなって感じです」。アイドル活動で培ったセルフプロデュース力、バーで身につけたトーク術に、寿司の技術がそろえば鬼に金棒。「早く修業先を見つけたい。早く寿司を握りたい」と目を輝かせていた。

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