株式会社サンリオは日本で50年以上グリーティングカード事業を展開し、年間約600種類のカードを販売している。そのデザインは幅広く、シンプルなプリントのものや音や光が出るもの、組み立てると立体的になりインテリアとしても楽しめるカードもある。同社のカード企画部・安友伸吾氏は、メール等の〝便利〟な情報伝達手段と紙製のグリーティングカードを比較し「リアルなものを生活空間に置いておくところに価値を見いだしてます」と語った。
サンリオは1969年にグリーティングカード事業をスタート。音や光を発するカードや、開くと中の絵柄が起き上がる仕掛けのカード、組み立てると前後左右どこから見ても立体的でインテリアとしても飾れるカードなどを制作してきた。安友氏は「普通の四角いカードを開いたら中から仕掛けが出てきてとか、封筒から出てきたら立体的になるというのをサプライズと捉えて、サプライズを届けたいということを念頭に置いて商品を企画している」と明かし、「サプライズを求めた結果」としてユニークなカードの数々が生み出されていると話した。
現代の情報伝達の手段としては、手紙だけでなくメールやLINE、SNSなどのツールがある。「他のツールにはないプラスアルファの付加価値がないと選んでもらえないので、そこでサプライズというのがより強調されるようになってきたのかなと思います」。安友氏はLINEを例に挙げ、「(LINEでもらったメッセージは)それだけを切り取ってどこかに飾ったり常に身につけておいたりすることができない。紙製のカードは、物として自分の生活空間に置いて、カードを日常生活の中で見るたびに相手のことを思ったり、もらったメッセージをふと読み返すきっかけを作ったり(することができる)。リアルなものを生活空間に置いておくというところに価値を見いだしてます」と語った。
カードを企画する時には「どこかで見たことあるような既視感のあるモチーフや風景、シーンを表現する」という。「カードを贈る相手の趣味嗜好を想像しながら買うので、あまり突拍子もない変なモチーフを選ぶというよりは、安心して選んでいただけるような王道モチーフとかの方が良いのかなと思います」と続けて述べた。
商品を企画するプランナーはモチーフ選びだけでなくカードの構造の設計も担当する。「封筒に入れて送るということが大前提」としているだけに、立体的になる商品の設計には苦労することもあるという。それでも「いくらカード企画部としての制約で封筒に入れないといけないということがあったとしても、『平らにしないといけないから立体にした時に変な形になるんだよね』と言い訳にはできない」と、封筒に収まる形にこだわっており、「企画あっての形態だと思っている」と説明した。
「カードを使う層は40~50代が中心」だといい、次世代の「若い人たち」への情報発信に力を入れていく必要があると考えている。「保育園とか幼稚園とか、手紙を書く文化がすごくあるんですよ。そういった文化は今もあるにもかかわらず、小学生や中学生、高校生になってくるといろいろな便利なツールがあるので、忘れちゃうんでしょうね。大人になってゆとりが出て、『手紙でも書こう』となった時に、便箋もあるけどカードを思い出してほしい」と語った。