資産家の東森功蔵氏から、顧問弁護士の私に急な電話がかかってきた。
「遺言状を書き直すから、すぐ来てくれ」
驚きながらも承諾の返事をする。
「あいつには愛想がつきた…財産はやらん」
功蔵氏は、独り言のように言うと電話を切った。私は首を傾げた。『あいつ』とは誰だろう?功蔵氏には妻と2人の子供がいるのだが…。
◇ ◇
東森邸につくと、長女の香織が出迎えてくれた。
「パパなら書斎にいるわ」
廊下を歩いていると、横の部屋から長男の良樹が現れる。
「なに? 気になるね」
私たちは3人で書斎の前に立った。扉をノックする。だが返事はない。何度か呼んでも同じだった。私は思い切って扉を開けた。
部屋の中が視界に入ってくる。
「パパ!」「オヤジ!」
香織と良樹が同時に声をあげた。
床に、功蔵氏が倒れていた。首にひも状の物が巻き付いている。私はすぐに功蔵氏に近づいたが…もう死んでいた。
「何かあったの?」。廊下から、妻の晴子の声がした。彼女は夫の死体を見て絶句した。
私は、部屋を見回す。窓が少し開いている。その時、一陣の風が書斎の中へ流れ込み、机の上の封筒を飛ばした。
「あ、遺言状が」
良樹の声で、風で床に落ちた封筒を拾い上げる。中の紙をとりだすと、確かに遺言状だった。
「警察を呼ばなきゃ!」。香織が声をあげた。
◇ ◇
警察が来るまでの間、私は考えた。誰が功蔵氏を殺したのか…。
遺言状を読むと、財産を3人の親族に平等に分けるという内容だった。変だ…電話の話とは違う。遺言状を、何も書かれてない白い封筒に戻しながら、さらに考える…。
その時、気がついた。犯人がわかったぞ!
さて、弁護士が推理する犯人は?