「あっ……ひどい!」
芝野初美は、ドアを開けて室内を見た途端、悲鳴に近い声をあげていた。
一人住まいの1DKの部屋は、見るも無残な状態だった。タンスの引き出しが飛び出し、物が散乱している。観葉植物が倒れ、床は土足の足跡だらけ。入口のマットや、玄関に落ちている郵便物にも足跡がついている。
「どろぼう…」
初美はあわてて、110番に電話した。
◇ ◇
「現金と宝石類が盗まれてました…」
ため息をつき、担当刑事に被害を告げる。刑事がメモを取りながら質問してきた。
「あなたは日曜の朝に出かけ、月曜の午後5時頃に帰ってきたんですね」
「ええ、休みがとれ実家に帰ってました」
「ドアの鍵穴に傷がなく、犯人は合い鍵で侵入してますね。合い鍵を渡した人がいますか?」 「恋人の城谷雄也に渡してます。それと友人の森川咲子に鍵を預けた事が…。海外旅行中に観葉植物に水をやってもらうためでした」
「その人たちの話を聞いてきます」
◆城谷雄也の証言 「合い鍵を持ってるけど僕が盗むわけないだろ。日曜は朝から夜中まで友人と遊んでいてアリバイはあるね。でも月曜は全然ないな」
◆森川咲子の証言 「鍵は預かったけど、合い鍵を作ったりしないわ。日曜も月曜も朝から夜までバイト。日曜の夜は一人だったけど…。そうだ。一度、鍵を妹の花恵に渡したわ。観葉植物の世話を代わってもらったから」
◆森川花恵の証言 「姉から鍵を預かり、初美さんの部屋に行ったことがあります。日曜の午前は一人でしたが、午後から月曜の夜まで友人と一緒でしたよ」
3人の容疑者のアリバイを調べると、証言通りであることがわかった。新たな手がかりもなく、手詰まりかと思われたが…。
ふと、刑事はある事に気がついた。
「そうか、時間を特定できるぞ!」
さて、泥棒はだれでしょう?