「ずいぶん、医学書が多い本棚だな。被害者は、医者だったのか?」
殺害現場のマンションに到着した加茂警部が、部屋を見回しながら言う。すると、根木刑事が首を横にふった。
「それは全部『かざり』ですよ。殺されたのは医者ではなく、結婚詐欺師ですね」
「えっ」
「被害者の名前は、浜山英敏。背中をナイフで刺され殺されてます。この部屋を調べると、いくつもの結婚紹介所に登録していて、何人もの女性と交際していたことがわかりました。独身で高収入の医者だと登録して、紹介される女性を餌食にしていたようです」
「ひどいな。そりゃ、背中にナイフでも突き刺したくなるか…」
「いま、浜山の携帯電話の通話記録を調べています。そこから、付き合っていた女性がわかるはずです。それと、手帳が見つかっているんですが、なんか変なメモが書かれてますね」
加茂警部は、出されたメモを見た。(図参照)
「日付は、女性に会う日だな。人に見られてもいいようにしているのか…今日は何日だった?」
「5日です」と、根木刑事。
警部はうなずくと、熱心にメモを見続けた。
その数時間後。携帯電話の通話記録に関する報告が入ってきた。
「浜山は3人の女性と同時進行でつきあってました。すべて独身女性で、これが名前のリストです」
◆高森雛子(たかもりひなこ)
◆本倉さより(もとくらさより)
◆井藤孝江(いとうたかえ)
「これから、それぞれの女性に聞き込みに行きましょうか」
「そうだな…まずはこの女性に会いに行こうか」と警部が言った。「たぶん彼女が、今日ここで浜山を殺した犯人だよ」
さて、警部が推理する犯人とは?