将棋の藤井聡太棋聖(王位との二冠)に渡辺明名人(棋王、王将との三冠)が挑戦する第92期棋聖戦五番勝負第3局が3日、静岡県沼津市の沼津御用邸東附属邸第1学問所で指され、後手の藤井棋聖が100手で勝利。通算成績を3勝0敗とし、18歳11カ月という史上最年少でのタイトル初防衛を達成すると同時に、タイトル通算3期獲得で同じく史上最年少での九段昇段を果たした。
カド番に追い込まれた渡辺名人の先手で、戦型は矢倉に。序盤は互角のねじり合いが続いた。中盤では互いに長考を繰り返したが、徐々に藤井棋聖のペースに。終盤は双方が持ち時間を使い果たし、AIの評価値もたびたび入れ替わる激戦となったが、最後は鮮やかに渡辺玉を即詰みに討ち取った。
藤井棋聖は3連勝とし、棋聖位を防衛。これまでのタイトル最年少防衛記録は、屋敷伸之九段が1991年の第57期棋聖戦で記録した19歳7日で、約1カ月の更新となった。また、最年少での九段昇進記録は、渡辺名人が2005年に第18期竜王戦で防衛して竜王通算2期を達成した21歳7カ月だったが、こちらは2年8カ月の大幅更新となった。
勝利した藤井棋聖は、途中で「形勢を損ねてしまったのかな。ずっと苦しいのかなと思っていた」と苦戦を意識していたことを口に。「自分としては、防衛戦ということは意識せずに、ぶつかっていくという気持ちで指すことができたのでは。どの将棋も少し苦しい場面もあったと思うので、そのあたりは課題だったのかなと思います」と淡々と語った。
最年少でのタイトル防衛には「自分としては、防衛戦ということは意識していなかったんですけど、『防衛して一人前』という言葉も将棋界にはあるので、結果を出せたことは良かったと思います」と心情を吐露。最年少九段昇段については「段位は本当にまったく意識はしていなかったですけど、九段というのは最高位なので、光栄なことかなと思います」と、こちらも淡々と話した。
渡辺名人は昨期に続き、番勝負で藤井棋聖に屈した。これまでタイトル戦登場38回で、歴代4位となる通算29期を獲得してきたが、タイトル戦の番勝負でのストレート負けは一度もなかった。また、棋聖戦第3局では、昨年も藤井棋聖(当時は七段)を相手に勝利しており、過去4戦で全て勝利してきたが、この日は〝魔王の壁〟も両方破られる無念の敗戦となった。
終局後、渡辺名人は「まあいろいろあったんですけど、ちょっと終盤は何かわからなかったですね。具体的に手がなかった」と無念の表情。タイトル戦番勝負で初のストレート負けには「別に負け方は、スコアは一緒かなと思います。意味ないですから、フルセットだろうがどうだろうが、意味はないと思いますので」とサバサバした表情だった。